STMで撮影したCuN表面上の1個のFe原子
STMで撮影したCuN表面上の1個のFe原子
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 米IBM Corp.は,Fe原子一個の磁気異方性を把握できたと発表した(発表資料)。研究成果を説明した論文を,米Science誌が掲載する。IBM社によれば,原子一個の磁気異方性を把握するのは世界初という。

 同社は,今回の成果は一個の原子でデータの1ビットを表現する技術の基礎になる可能性があると指摘する。この研究を手掛けたIBM社,Almaden Research Center,Research Staff MemberのCyrus Hirjibeheden氏は「今後,一個の原子に何らかのエネルギーを加えて磁気異方性を切り替え,『1』と『0』を表現する技術を開発したい」という。このような技術が実現すれば,超高密度のデータ保存が可能になる。

 IBM社の論文名は「Large Magnetic Anisotropy of a Single Atomic Spin Embedded in a Surface Molecular Network」(同論文)。Scienceの2007年8月31日号が掲載した。実験では,IBM社が開発した特殊な走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いて,CuNで構成した表面にFeとMnの原子を一個ずつ配置した構造体を作成した。Heで0.5度Kまで冷やした状態で,Fe原子の磁気状態を観察した。Hirjibeheden氏によると,以前の研究では100万個単位で原子を観察し,平均的な磁気異方性の情報を得ていたという。

 同氏によれば,今回の実験ではFe原子の磁気異方性が高速に変化していることを示す情報が得られたという。Feの磁気異方性を二つの方向に安定して切り替える方法の実現が,今後の研究テーマである。

動画 「IBM提供の原子一個の磁気異方性を切り替えて0/1を表現するイメージ」(Windows Media,約12秒)
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(動画の公開は終了しました)

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