富士経済(本社東京)は2007年8月31日,産業用ロボットの世界市場と業務・民生用ロボットの日本市場について,動向を調査した結果を発表した。今回の調査は,日系・海外関連企業約100社を対象に,産業用ロボット16品目,電子部品実装機4品目,業務・民生用ロボット12品目,周辺機器・部材12品目の4分野で実施したもの。調査実施時期は,2007年5~7月。

 産業用ロボットの2006年の世界市場は,前年比で3%増の4137億円。自動車分野や液晶分野が低調だった一方,組み立て・搬送系や単軸系が好調に推移した。2010年にはさらに46.7%拡大し,6068億円に達する予想だ。エリア別の市場規模は,日本,アジア,米国,欧州の順だが,インドで自動車向けロボットの需要が拡大している。

 産業用ロボットの中で双腕ロボットと7軸以上の関節を持つマニュピレータ・ロボットの世界市場は,2010年に2006年度比で約14倍の490億円になる見通しだ。特に国内では,少子高齢化や労働者不足,世界での価格競争を背景に,組立工程の自動化ニーズが高まっている。この分野での2006年の採用は,主に双腕ロボットの製品評価を目的とするもので,本格的な市場の立ち上がりは2007年から。現状では大手自動車メーカーの採用が中心だが,将来は,家電製品の組立工程に採用する可能性もあるという。

 小型垂直多関節ロボットでは,2010年は,2006年の226億円から71%増えて387億円となる予測。現段階では,主に自動車部品,携帯電話機,パソコンの組立や搬送などに採用されている。これらの工程は自動車の溶接・塗装ラインほど自動化が進んでいないため,拡大の余地が大きい。地域別では,組立工程の自動化意欲が高い日本での需要が最も多く,全体の50%を占めている。メーカーごとにみると,三菱電機が三菱電機エンジニアリングと連携し,自動化システムの提案を強化。デンソーウェーブ,ファナック,独Staubli社などが続く。

 一方,業務・民生用ロボットの2006年の国内市場は20億円。産業用ロボットに比べると,まだ規模が小さい。しかし,パワーアシスト・スーツやレスキューロボットの実用化,既存分野への新規メーカーの参入,新製品の投入などにより,2010年には3.2倍の65億円に達する予想だ。課題とされるコスト面では,ハード/ソフトのプラットフォーム化によるメーカーの開発負担軽減や,レンタル販売や補助金によるユーザーの初期投資の負担を軽減する取り組みが進んでいる。技術面では,対人,対物の安全性を一層強化する必要がある。さらに,法律の整備やロボット保険といった社会的な枠組み作りも求められている。 

 その中でパワーアシスト・スーツについては,現段階で市場が未形成だが,2010年には国内で30億円規模になる見通し。筑波大学発のベンチャー企業であるサイバーダインや,松下電器産業の社内ベンチャー企業であるアクティブリンクなどが製品化に向けた取り組みを進めており,2007年末から2008年半ばごろには市場が立ち上がる見通し。

 現在,産業用ロボットメーカーは,その技術をモジュール化して業務・民生用ロボットメーカーに販売することを検討するに留まっている。しかし富士経済では,これらメーカーは産業用ロボットの収益力低下をカバーするために,これまでロボットの導入が困難だった製造工程やオフィス,一般家庭といった新しい領域を模索・開拓するとみる。一方の業務・民生用ロボットは,法整備や要素技術の開発,低コスト化など普及に向けての課題が多く,産官学の連携を強化する必要があるとする。

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