情報通信総合研究所は,モバイル・コンテンツや携帯電話機向け電子商取引(モバイル・コマース)などの携帯電話サービス普及による日本経済への波及効果を発表した(発表資料)。ここでいう経済波及効果は,日本国内における関連する産業の生産までを含めた生産額全体のうち,原材料部分を除いた部分をいう。

 同研究所は,2006年におけるモバイル・コンテンツおよびモバイル・コマースによる経済波及効果を6179億円と推定する。内訳は,モバイル・コンテンツの波及効果が3801億円,モバイル・コマースの波及効果が2378億円である。移動体通信や携帯電話機を含めたモバイル関連産業全体の波及効果は,8兆4937億円とする。モバイル・コンテンツとモバイル・コマースを合わせた波及効果は,モバイル関連産業全体の効果の7.3%に当たる。携帯電話機の波及効果に対しては約半分である。

 2010年における推計では,モバイル・コンテンツおよびモバイル・コマースによる経済波及効果は,2006年の3.9倍の2兆4095億円となる見通しという。この金額は2010年の携帯電話機の経済波及効果2兆3842億円と同水準。2006年にはモバイル・コンテンツとモバイル・コマースによる経済波及効果が,携帯電話機の波及効果の約半分であることを考慮すると,急激に増加することになる。2010年のモバイル関連産業全体の波及効果は,2006年比1.7倍の14兆1576億円となる見込み。同研究所は,近年の携帯電話サービス加入者の成長の鈍化により,移動体通信の波及効果が大幅に増加する可能性は低いが,今後はモバイル・コンテンツやモバイル・コマースの成長によって経済波及効果が持続すると見込む。

携帯電話サービスのもたらす経済波及効果の推移(モバイル上位レイヤは,モバイル・コンテンツとモバイル・コマースの合計)
携帯電話サービスのもたらす経済波及効果の推移(モバイル上位レイヤは,モバイル・コンテンツとモバイル・コマースの合計) (画像のクリックで拡大)

 2006年におけるモバイル・コンテンツの経済波及効果の内訳を見ると,「着メロ・着うた系」が最も多い1899億円で,全体の約半分を占める。モバイル・ゲームは2番目に多く,832億円。2010年の推計額は,「着メロ・着うた系」が3823億円,モバイル・ゲームが3581億円となる。携帯電話機の高機能化に伴ってモバイル・ゲームが大きく成長し,モバイル・コンテンツと同規模の経済波及効果を及ぼすと予測する。

モバイル・コンテンツとモバイル・コマースの経済波及効果の内訳
モバイル・コンテンツとモバイル・コマースの経済波及効果の内訳 (画像のクリックで拡大)
携帯電話サービスのもたらす雇用創出効果
携帯電話サービスのもたらす雇用創出効果 (画像のクリックで拡大)

 情報通勤総合研究所は,携帯電話サービスの普及による雇用創出効果も算出している。2006年におけるモバイル・コンテンツおよびモバイル・コマースの雇用創出効果は8万2000人。モバイル関連産業全体では61万7000人である。2010年には,モバイル・コンテンツおよびモバイル・コマースの雇用創出効果は2006年比4.1倍の33万2000人,モバイル産業全体では同1.8倍の111万2000人になるという。中でも最も大きく伸びるのはモバイル・コマースで,2006年比6.1倍の22万2000人に達するという。