2007年8月1日に開催された情報通信審議会 情報通信政策部会の会合において,地上デジタル放送保管再送信審査会が策定を進めている「地上デジタル放送IP再送信方式審査ガイドライン」の暫定版が提示された。同日の会合では,「地上デジタル放送の利活用の在り方と行政の果たすべき役割」第4次中間答申案の検討が行われた。ガイドラインの暫定版はこの答申の参考資料として掲載される予定である。

 ガイドラインは,電気通信役務利用放送事業者が地上デジタル放送をIP再送信するときのIP再送信方式が満たすべき基準を規定するものである。大きく「技術要件」と「運用条件」から構成される。

 技術要件としては,(1)地域限定性,(2)著作権保護,(3)サービス・編成面の同一性,(4)技術面の同一性などを規定している。地域限定性としては,地上デジタル放送の放送対象地域に限定することが可能であることなどを求めている。著作権についても,放送と同等のコンテンツ保護機能を有することを求めている。サービス・編成面の同一性については,暫定版では8項目が記載されている。例えばCAS(限定受信システム)については,異なる方式を利用する場合でも地上デジタル放送で実施するサービスと同等のサービスを実施できること,を求めている。

 技術面の同一性については,19項目が記載されている。「対象地域の地上デジタル放送と同数のチャンネル選択が可能」「サービス一契約当たり2チャンネル以上または2箇所以上で,同時視聴/録画できることが望ましい」「映像・音声・データ放送の遅延は地上デジタル放送の電波の受信に比べて,システム全体で2.5秒以下であること」「画質については,地上デジタル放送の画像と,IP再送信の画像(再符号化した画像)の画質評価結果で,指定した画像の数の75%について有意差がないこと」「地上デジタル放送のエンジニアリングサービスと同等の機能を有すること」「同時にIP自主放送やVODサービスを提供する場合は,受信端末は地上デジタル放送の再送信ではないことが視聴者に明確にわかる機能・操作性を有すること」「チャンネル切り替え時間は地上デジタル放送受信機と同等であること」などである。

 運用条件では,11項目が規定されている。例えば「電気通信役務利用放送事業者が視聴履歴を取得できる技術方式を使用する場合は視聴履歴の取り扱いに関する方針を明示するとともに,地上デジタル放送の履歴はデータを保持せず速やかに破棄されることが明記されていること。そのとおり運用できる体制を確保すること」などが含まれる。さらに,ガイドラインでは「他標準との関係」や「審査申請のための必要書類」などの説明が記載されている。

 審査会では,2007年秋をメドに最終案を作成し意見募集したあと正式版を作成する予定である。