会見に臨む片山社長
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採用するのは2850mm×3050mmのガラス基板
採用するのは2850mm×3050mmのガラス基板
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コンビナートの概要
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コンビナートの効果
コンビナートの効果
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 シャープは,液晶パネルと太陽電池の新工場を大阪府堺市に建設する(Tech-On!の第1報)。2007年7月31日に大阪で開催した記者会見で発表した。

 ガラス基板やカラー・フィルタなどの部材や装置,ガス・電気といったインフラ関連の企業を同じ敷地に誘致,「コンビナート」として展開する。既に,米Corning社や大日本印刷,関西電力グループの誘致が決まっている。「亀山工場で構築した垂直統合の形態を,さらに川上まで推し進める。企業の垣根を超えたノウハウを集約して,モノづくりを進める」(シャープ 代表取締役社長の片山幹雄氏)。

 記者会見での主な一問一答は以下の通り。

――コンビナート全体の投資が1兆円になるとの話だが,その内訳は

 液晶パネル工場への投資は,第2期ラインを立ち上げて投入能力を7万2000枚/月にするまでで約3800億円を想定している。これに部材やガス・電気などインフラ関連の企業の投資額が4000~5000億円,さらに太陽電池工場への投資額を加えると大体その程度になる。ただし,太陽電池工場の投資額などの詳細は現段階では決定していない。

――液晶新工場の競争力についてどのように考えているか

 液晶パネルと液晶テレビの技術が融合して相乗効果を生んだのが亀山工場だった。今回は,融合の範囲を部材や設備まで広げる。そこに大きな意味がある。それぞれの技術が融合して相乗効果を発揮することで,単にガラス基板が第10世代に大きくなっただけではないメリットが生まれる。

――大型品の生産に向く第10世代(2850mm×3050mm)のガラス基板を採用するわけだが,50型や60型台といった大型液晶テレビの需要に確信があるのか

 現在は32型がボリューム・ゾーンだが,今後はこれに加えて42型の需要も相当大きくなると見込んでいる。新工場は,まずはこの42型の生産に照準を絞ることを考えている。採用するガラス基板からは42型が15枚取れる。42型を中心にしながら,57型や65型なども生産する予定だ。

――亀山・第2工場で採用したインクジェット技術によるカラー・フィルタ形成のように,新たなプロセスの導入は考えているのか

 生産効率を高めるという点では,部材やガス・電気などのインフラを取り込んで,コンビナートとして展開する効果が非常に大きいと考えている。もちろん,新たなプロセス技術も導入していくが,詳細については容赦してほしい。インクジェット技術によるカラー・フィルタの形成は,新工場でも展開する予定だが,さらに新たなカラー・フィルタ技術を各社が開発してきている。そうした新規技術も導入したいと考えている。

――ガラス基板はコンビナートに誘致する米Corning社からの1社供給になるのか

 Corning社に加えて,近くに工場がある旭硝子からも供給する。1社供給ということはない。

――新工場の立ち上げに合わせて液晶パネルの外販を積極的に始めるとのことだが,なぜ従来と方針を変えるのか

 これまでは,パネルの生産能力が不足していた。世界の液晶テレビの需要の高まりがあまりに急激すぎて,外販できる能力を持ち合わせていなかったのが実情だ。新工場が立ち上がれば,十分な供給能力が備わる。テレビ・メーカーからの要望があれば,積極的に供給していきたい。

――外販比率はどの程度にするのか

 これからテレビ・メーカーの要望を聞いたうえで判断していく。外販比率の目安は決めていない。

――液晶パネル工場への投資額である3800億円は,どの程度で回収できるのか

 数年以内に回収できると試算している。

――「亀山モデル」という名称は今後どうするのか

 今のところ決めていない。さまざまな意見を聞きながら検討していきたい。

――今後,有機ELパネルの存在感が高まった場合,どうするのか

 液晶技術は今のままで止まらない。これからも,「すごい液晶」を提供していく。真の壁掛けテレビの実現に向けて,液晶技術を進化させる。

――太陽電池の工場を液晶パネルの工場と同じ敷地に建設することによって,どのような相乗効果を期待しているのか

 部材やガス・電気などのインフラを取り込んで生産効率を高めるという液晶パネルと同様のシミュレーションが,太陽電池においても成り立つと考えている。

――コンビナートには,最終的にどの程度の企業が集まるのか

 現時点では回答を差し控えたい。

――新工場の建設地を堺市に決めた理由は

 関連企業の工場を集結したコンビナートにするために,亀山工場に比べて広大な土地が必要だった。まずは,その点で候補となった。さらに,シャープのような会社の規模では技術者の数が限られている。そのため,できるだけ技術者の拠点(天理や亀山など)から近いところが良いと判断した。本社からも近いという利点がある。

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