米国立再生可能エネルギー研究所(National Renewable Energy Laboratory:NREL)は米Innovalight, Inc.と協力して,「複数エキサイトン生成(multiple exciton generation:MEG)」が,Siナノクリスタル(量子ドット)で効率的に起こることを示した(発表資料)。MEGは,太陽電池においてこれまで熱として失われていたエネルギーの一部を電気に変換し,発電量を追加する手段となり得る。NRELは,Innovalight社製のSiナノクリスタルで起こったMEGにより,太陽光に含まれる波長420nm以下の紫外線の光子1個を吸収した場合に,1個以上の電子を生成できたと主張する。この2年間,MEGは鉛(Pb)などを含む半導体材料でのみ起こると報告されていた。今回,Si材料でMEGが確認できたことにより,太陽電池の発電効率向上とコストダウンが期待できるという。

 NRELの計算では,Siナノクリスタルによる太陽電池でMEGがもたらす理論的な最大変換効率は,集光しない場合で約44%,特殊レンズや鏡で500倍に集光した場合で68%になるという。これに対し,従来の太陽電池の最大変換効率は,同じ太陽光条件下,集光しない場合で33%,集光した場合で40%である。

 この成果は,American Chemical Society(米化学会)が2007年7月24日に発行した学術誌「Nano Letters」のオンライン版に掲載された(参考資料)。NRELは,J. Nozik氏らによって研究チームを構成している。Nozik氏は1997年,量子ドットによって太陽光発電の効率を高められるかもしれないと予測しており,今回はこれを確認する結果となった。今後は,光子1個当たりの変換効率のさらなる向上のほか,太陽光スペクトルのより広範囲な波長でMEGが起こるようにすること,より短い波長でもMEGが明確に現れるようにすることなどを目標に研究を続ける。

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