「コピー回数(n)は9回,オリジナルの1を加えてコピー10回というのが,主査として適当だと考える」。長く続いた地上デジタル放送のコピー制御方式(いわゆるコピー・ワンス方式)の見直しは,最終的に委員会の主査を務める慶応義塾大学の村井純氏からの主査提案という形で決着した。

 総務大臣の諮問機関である情報通信審議会が開催する「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」の第19回会合が7月12日に行われた。今回の会合では,7月19日に予定される情報通信政策部会に同委員会が提出する中間答申案を検討した。この中間答申には,コピー・ワンス方式の改善案に加え,「コンテンツ取引市場の形成と取引の活性化に向けた具体策の在り方」に関する提言を含む。

 4月18日に行われた第14回会合で同委員会は,地デジのコピー制御方式を「デジタル放送チューナーとHDD録画機一体型の端末コピーワンスの番組を受信した場合に,n回限定で1世代のみコピー可」という方針を打ち出していた。その後,水面下で調整を続け,今回の結論に至った。

 村井氏によると,n=9の根拠は3×3。録画したコンテンツに対し,一人あたり機器3台までコピーを許し,それを家族3人が行うという考えで計算した。コピー数3という数字自体はもともと,権利者サイドの委員である実演家著作権隣接センターの椎名和夫氏などから出ていた意見である。村井氏の提案はこれに「日本の平均的な家族の構成人数」(村井氏)である3人を組み合わせた形になる。家族3人,機器3台というのは考え方の話であり,1種類の機器に対し,9回コピーを行ってももちろん問題ない。

 この提案を受け,椎名氏は「コピー数3という主張自体は取り下げないが,主査の提案は本検討委員会の成果として承る。長きにわたった委員会の議論の成果を壊すつもりはない」などと述べ,主査提案に反対しない意向を示した。ただし椎名氏は「再三述べているように,この合意は私的録音録画補償金制度の存続が前提。この前提が崩れたり,コピー制御の緩和で海賊版が溢れたりといった状況になった時には,再度,検討をやり直すという立場を留保したい」と釘を刺した。

 他の権利者サイドの委員の意見もおおむね同様で,日本映画製作者連盟の華頂尚隆氏は「映画はコピー・ネバーが原則で10回という主査の提案には驚いた。この数字は受け入れがたいが,この場で席を蹴るつもりはない。主査にはこうした微妙なニュアンスをくみ取って頂きたい」と述べた。

 同委員会は7月19日に予定される第20回会合で「第4次中間答申」を正式にまとめ,同日開催される予定の情報通信政策部会で答申する予定である。

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