2枚重ねの基板を取り出した技術者たちは(Tech-On!の関連記事),基板の分析に取りかかった。ここで分かったのは,無線モジュールと,iPodの機能などを実現するメイン・モジュールが別々の基板として実装されていたことである。iPhoneの背面側に配置されている無線モジュール,ディスプレイ側に配置されているメイン・モジュールの順に見ていこう。

 無線モジュールは,基板全体が大きなシールドで覆われていた。このシールドを取り除くと,左右に2個ずつ実装されたチップと,中央部にベアチップ実装された2個のチップなどが顔を出した(図1)。


図1 基板全体がシールドで覆われていた無線モジュール(画像をクリックすると高解像度の画像データを開きます)

 右上にある10mm角のLSIには「1YUSM484S02」などの文字が見える(図2)。「どうやらベースバンド・プロセサだろう。ただ,メーカー名や仕様は分からない」(分解作業に協力した技術者)。その下に位置する8mm×10mmのLSIは「1030W0YT02」などの文字が書かれている。これはフラッシュ・メモリの可能性が高そうだ。

 中央上部のベアチップ実装された2個のチップは,それぞれ無線LANとBluetoothのRF ICのようだ。中央上部に位置する無線LANのRF ICは米Marvell Semiconductor, Inc.製であることを表す「MARVELL」の文字が,中央の中段左寄りに実装されているBluetoothのRF ICは英CSR社製であることを示す「CSR」の文字がそれぞれ書かれていた。


図2 無線モジュールの拡大写真(画像をクリックすると高解像度の画像データを開きます)

 この基板の裏面には,64端子のコネクタが実装されている。このコネクタでメイン・モジュールと接続している。


図3 無線モジュールの裏面(画像をクリックすると高解像度の画像データを開きます)

 続いて,メイン・モジュールを見ていこう(図4)。無線モジュールと重なる位置に実装されている,Apple社のロゴマークが入った14mm角のLSIには,「339S0030 ARM」と書かれている。ARMコアを内蔵するSoCのようだ。「パッケージに『K』から始まる文字列が書かれている。これは韓国Samsung Electronics Co., Ltd.が製造したのだろう」(分解に協力した技術者)。


図4 ARMコアを内蔵するSoCを中央に実装したメイン・モジュール(画像をクリックすると高解像度の画像データを開きます)

 無線モジュールと接続するためのコネクタ(基板の右下)の上には,英Wolfson Microelectronics社の音声コーデックLSI「WM8758」が実装されている。「Wolfson社のオーディオ・コーデックLSIは,これまでのiPodシリーズにも採用されていた。やはりこの基板がiPodの機能を受け持っているのだろう」(分解に協力した技術者)。

 この基板を細かく見ていった技術者たちは,H.264などの映像を復号化するためのLSIが見当たらないことに気付いた。「このSoCの中に,映像の復号化機能も取り込んだのではないか」(分解に協力した技術者)。またフラッシュ・メモリは,丸い穴が開いたシールドで覆われた部分に配置されているようだ。

 メイン・モジュールの裏面は,4個のコネクタと,SIMカードのスロットが実装されている(図5)。左下に配置した大型のコネクタはフレキシブル基板によって,本体下部にある外部接続用の「Dockコネクタ」に接続されている。


図5 メイン・モジュールの背面。SIMカードのスロットが非常に大きく感じられる(画像をクリックすると高解像度の画像データを開きます)