図1 プリンタ・メーカーA社のプリンタで印刷した画像サンプルの耐ガス性比較
図1 プリンタ・メーカーA社のプリンタで印刷した画像サンプルの耐ガス性比較
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図2 プリンタ・メーカーB社のプリンタで印刷した画像サンプルの耐ガス性比較
図2 プリンタ・メーカーB社のプリンタで印刷した画像サンプルの耐ガス性比較
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 パソコンおよびプリンタなど周辺機器の品質や互換性の検証会社であるアリオンが,インクジェット方式プリンタの純正インクと詰め替えインクのそれぞれで写真を印刷したときの色あせの度合いを比較評価した。評価結果とメーカー名の対応は明らかにしていないが,対象となったプリンタはセイコーエプソン製とキヤノン製のそれぞれ1機種である(図1,図2)。その結果,少なくとも色あせに関しては,純正インクが他社製詰め替えインクを使った場合よりも保存性に優れることを実証した。アリオンは,第三者の立場から公正な評価を実施する評価機関として,今回の色あせ評価をサービス事業として受託している。

今回アリオンは,色あせの原因になるオゾン(O3),窒化酸化物(NOx),硫黄酸化物(SOx)の3種類のガスを使って耐ガス性の加速試験を行った。国内の大手プリンタ・メーカー2社の製品を使って評価した結果,純正品のインクと用紙を使った場合には5年に相当する加速試験を行っても目立った色あせはない。これに対し詰め替えインクと純正用紙を使った場合には,1年相当の試験でも色あせが目立ってくる。

 現在プリンタ・メーカー各社は,セイコーエプソンが「つよインク200」,キヤノンが「ChromaLife100」といった具合に印刷後の保存性に優れることを自社製品の訴求点にあげている。そして,こうしたプリンタの能力は,プリンタの特性に最適化した純正のインクや用紙を用いた場合に発揮できるというのが,プリンタ・メーカーの言い分である。これに対し,詰め替えインク・メーカーは純正品と遜色のない品質の写真が印刷できることを一様にアピールしている。

保存性の評価は,フォトフレームに入れた写真が室内の光によって劣化する度合いを評価する耐光性,アルバムに保存した条件を再現した暗所での劣化を評価するアルバム保存性(暗所保存性),そして今回アリオンが評価した耐ガス性の三つがある。このうち,耐ガス性に関しては,評価条件に各社違いがある。今回アリオンが評価した条件は,キヤノンが社内で実施している評価と同等のものである。

条件は以下のとおり。試験用画像には画像電子学会の標準画像「N1A.tif」を用い,プリンタ・メーカー各社が販売するプリンタと純正の用紙を組み合わせて用いる。インクのみを変えて,純正品と詰め替え品の違いを評価している。対ガス性の加速試験のガス濃度はO3が150ppb,NOxが900ppb,SOxが50ppbであり,通常の実環境の100倍の濃度にしている。試験温度は24℃,湿度は60%である。この条件では72時間の試験で,実時間の1年に相当する劣化を起こすことができる。

日本工業標準調査会(JIS)が定めた染色堅牢度試験項目と比較して異なる点は,ガスを流して試験している点である。ガス腐食試験機にはスガ試験機製「DS-UV」を用いている。混合ガスを流さない場合,評価中の化学反応の進行によって写真表面のガス濃度が薄くなる。しかし実環境では,加速試験時にみられるこうした濃度変化はほとんど起きない。ガス濃度を一定にするためにはガスを流す必要がある。JISの標準では,ガス濃度が徐々に薄くなる環境を前提とした条件を採用している。このため,今回アリオンが使用した条件と比較すると,ガス濃度は濃い条件になっている。

ちなみに,セイコーエプソンは温度と湿度に関しては同じだが,ガスはO3のみ,流していない条件で評価している。O3は,特にインクの色のうち,マゼンダが顕著に劣化する傾向がある。

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