MB86K21を使った場合のPCカードのブロック・ダイアグラム
MB86K21を使った場合のPCカードのブロック・ダイアグラム
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 富士通は,モバイルWiMAX用チップの開発ロードマップを明らかにした。同社のモバイルWiMAXチップとしては,2007年5月に発表したベースバンド処理LSI「MB86K21」がある。これに加えRFトランシーバICも現在開発中で,近々出荷を開始する予定だ。両者を組み合わせた小型送受信モジュールも開発しているが当面は社内向け。外販は未定とする。富士通はこうした製品をまずPCカード向けに供給し,2008年以降に実装面積をminiSDカード大まで小型化し,組み込み機器や超低価格携帯電話端末に向ける。

2009年には45nmプロセスも適用


 ベースバンド処理 LSIに関しては,この 5月に発表した「 MB86K21」が最初の量産品となる。90nmの CMOSプロセスを使って製造するチップで,下り方向で18.6Mビット/秒のデータ伝送速度を実現しながら,消費電力が240mWと低いことを特徴とする。海外の展示会などで,一次変調方式に64QAMを採用した場合でのデータ伝送を実演済みである。PCカードでの利用を強く意識して設計されたLSIで,Card BusやUSB2.0などのインタフェースに対応する。 MB86K21は,「♯1」という開発コード名で呼ばれている。これに先立ち,「♯0」と呼ばれる評価およびデモ専用のチップがあった。

  2008年には,65nmのCMOSプロセスを使う「♯2A」,および「♯2B」を投入予定だ。♯2A はPDAなど,小型携帯機器への組み込みに向けたチップで,消費電力を♯1よりもさらに低減することを目指している。♯2Bは,BRICs地域などに向けた超低価格の端末に向けたLSI 。富士通は将来的に,モバイルWiMAXだけに対応する超低価格の携帯電話機が登場するとみており,そうした需要に向ける。このほか2009年には,45nmプロセスを使った携帯電話機向けのチップを,そして2011年以降では32nmプロセスを使う構想もある。

 一方でRFトランシーバICに関しては,2.5GHz帯向けで5/10MHz帯域幅に対応する90nmプロセス利用のチップを,2007年中に何らかの形で出荷する。2008年には,さらに小型化したRFチップを開発する。富士通は,このRFトランシーバICと,ベースバンド処理LSI「♯2A」,およびメモリやパワー・アンプなどで構成する送受信回路のすべてを,miniSDカードの寸法に収めることを想定している。「最終的には,microSDカードの寸法まで小型化したい」(富士通 電子デバイス事業本部)。 このほか,RFトランシーバICを45nmプロセスで製造する構想もある。

まずはPCカードに搭載

 富士通は,#1チップを載せたPCカードを,2007年夏にもリファレンス・デザインとして供給開始する予定だ。2.5GHz帯を利用するサービスに向けたものとしている。このPCカードのリファレンス・デザインでは,供給を急ぐため,富士通以外のメーカーが製造したRFトランシーバICを利用して設計する。富士通は採用予定のRFトランシーバICのメーカー名などは明らかにしていない。