2.5GHz帯無線周波数を用いたモバイル・ブロードバンド・サービスには,総務省が2006年12月に開催した公開ヒアリング「BWAカンファレンス」で,14社・団体が参入に名乗りを挙げた。ところが,今回の総務省の免許割り当て方針案にある「第3世代携帯電話(3G)サービスを提供する事業者とそのグループ会社でないこと」,という条件によって,KDDIやNTTグループ,ソフトバンク・グループなどの大手通信事業者が軒並み対象外となり,PHS事業者のウィルコムと,ADSL回線のホール・セール事業を展開するアッカ・ネットワークスが一躍有力候補として浮上した(関連記事1関連記事2)。ウィルコムは「次世代PHS」の実現を掲げているおり,モバイルWiMAXを採用する方針を明らかにしているのは,事実上アッカ・ネットワークスだけである(関連記事)。

 総務省案には,免許認定から5年以内に地域ごとに50%以上の人口をカバーすることが免許付与の条件とする規定もある。基地局などインフラの整備でかかるコストは,数千億円になる可能性もある中,これら「生き残った」通信事業者がどのようなサービス計画を持っているのか。今回は,アッカ・ネットワークスのWiMAX推進室副室長 高津 智仁氏に,今後の計画やビジネスモデルなどについて聞いた。(聞き手=野澤哲生)

――ビジネスモデルの青写真を知りたい。これまではデータ通信中心の無線アクセス・サービスで大きく成功した例がないが,その点をどう考えるか。結局,音声サービスが中心なのか。

高津氏 我々は,2.5GHz帯のサービスを第3世代携帯電話とは異なるビジネス形態で考えている。まず,(有線の)ADSLと同様に,中心になるのはデータ通信,つまりインターネットへのアクセスで,それがキラー・アプリの一つになると考えている。音声サービスもアプリケーションの一つとして提供するかもしれないが,音声サービスのためにこの事業に参入するということはない。

――3G事業者の2.5GHz帯の利用案を批判していたが,それはなぜか。

高津氏 2006年12月に開催したBWAカンファレンスで3G携帯電話事業者は,3Gサービスで帯域がひっ迫した地域では,2.5GHz帯の無線周波数を3Gの補完として利用することを主張していた。それでは,2.5GHz帯の無線周波数が全国ではなく,一部地域でしか活用されないことになる恐れが出てくるためだ。

――早ければ2007年内にもサービスを開始すると一部で報道されている。

高津氏 2007年内にサービスを始めるとすれば,それはいわゆるデジタル・デバイド対策としての固定通信系のサービスになるだろう。移動通信のほうは,モバイルWiMAX対応の端末が利用可能になるのが遅れており,年内のサービス開始は難しいと考える。

――現時点で,アッカ単独でサービスをするか,他の通信事業者と連合を組むかは決まっていないのか。

高津氏 今はまだ両方の可能性を検討している段階だ。連合を組む場合は,ホール・セール事業であるADSLと同様に,我々が黒子となって,無線アクセス回線をサービス事業者に提供するという形態になる可能性もある。