総務省は5月15日に,モバイル・ブロードバンド用の2.5GHz帯の無線周波数について無線基地局免許の割り当て方針案について発表した(第一報)。既存の携帯電話事業者4社を対象外とする同案については,各社に対して事前の説明などはなく,対象外とされた携帯電話事業者にはかなりの混乱が広がったようだ。従来から米WiMAX Forumなどでサービスに向けたプロファイルの策定に参加していたKDDIは「モバイルWiMAX方式の実証実験などを行い,技術進展と国際標準化活動による同方式の発展に貢献してきた。総務省の方針は当社の期待に反する」というコメントを発表するなど,失望を隠さない。

 今回の割り当て方針案がどのような経緯,考えから作成されたのか。総務省の総合通信基盤局電波部移動通信課に話を聞いた。(聞き手は野澤哲生)

――今回の案は,どのように決まったのか。通信事業者の意見は聞かなかったのか。

移動通信課 決定は総務省内での検討の結果だ。技術基準については,通信事業者やメーカーの意見を聞いて取りまとめるが,2.5GHz帯の移動通信に関しての技術基準の議論は2006年12月で終わっている。免許付与の方針は今回に限らず,いつも省内で決めていることだ。ただし,やはり外部の人の意見を聞く必要はあるので,今回のパブリック・コメントの募集を開始した次第だ。

――グループ会社ではあるが,子会社ではない通信事業者の取り扱い,具体的にはNTTドコモに対するNTT東日本,NTT西日本などは今回の案ではどうなるのか。

移動通信課 NTT東日本,NTT西日本が単独で今回の免許を受けることはできない。資本関係などがない他の通信事業者と連合を組んで,しかも連合全体で見た場合の同社の出資比率が1/3以下だった場合は問題がない。総務省としては,そうした事業者連合は望ましい方向と考えている。

――新規参入事業者に免許付与の対象を絞ると,せっかくのモバイル・ブロードバンド用の帯域が,音声通信中心になってしまう恐れはないか。というのも,無線通信のキラー・アプリは音声しか見つかっておらず,データ通信だけの無線アクセス・サービスがビジネスとして成功した例はまだ聞かないからだ。数千億円の投資コストを回収するのに音声なしのサービスで,やっていけるとは思えないが…。

移動通信課 これまでそうだったからといって,今後も同じとは限らない。まず,電話サービス自体成功が保証されているわけではない。というのも,総務省としては今回の2.5GHz帯のサービスは,オールIP(internet protocol)が前提で,言わばADSLの無線版という認識を持っている。電話サービスを提供する場合はIP電話の形態になる。ADSLで「050番号」から始まるIP電話サービスはすでに始まっているが,結果としてそれらが収益の柱になるほど伸びてはいない。電話番号の議論はまだこれからだが,ADSLの延長上で考えれば2.5GHz帯でのIP電話サービスには,050や060が割り当てられると考えるのが自然。少なくとも携帯電話用の「090番号」や一般固定電話用の番号が使えるようにはならないだろう。それ以上のビジネスモデルの議論は,各事業者が考えることだろう。

――パブリック・コメントの後の手続きは?

移動通信課 パブリック・コメント募集の後は,今回の案を必要に応じて修正した後,電波監理審議会にかけることになる。修正が必要になるかどうかは,パブリック・コメント募集の結果次第となる。電波監理審議会の日程もまだ白紙だ。