神戸製鋼所は,ヒ素(As)を高効率で吸着・浄化する鉄粉を開発,商品化する。この鉄粉は工場排水や温泉排水,地下水などの浄化を目的としたもので,鉄粉を入れた容器にAs汚染水を連続的に流すだけで,As濃度を環境基準値(飲料水基準値)である0.01mg/L以下にできる。従来のAs吸着剤と比較して2倍以上の吸着力があるという。Asに限らず,鉛(Pb)やカドミウム(Cd),セレン(Se)などの重金属の浄化にも使える。

 この鉄粉は,高圧水の噴射によって溶融金属を噴霧して得られた金属粉末。Asの吸着反応を促進する成分を合金化することでAsなどの有害物質の吸着力を大幅に高めた。同社の「V-ジェットアトマイズ法」を用いることで鉄粉を安定的に得られるという。例えば鉄粉1kgを用いることで,100m3のAs汚染水のAs濃度を0.1mg/Lから0.01mg/L以下まで下げられる。

 As汚染水の浄化には,従来,塩化鉄(III)などの水処理用薬剤を用いた共沈法が用いられていた。共沈法とは,鉄塩とAsを反応させて,難溶性化合物として沈殿させて取り除くというもの。だが共沈法では,効率的に沈殿させるためのpH領域を維持するために,酸やアルカリによるpH調整が必要となる上,攪拌,沈殿,脱水といった工程の管理が煩雑であり,Asを含む大量の汚泥が発生するという問題もあった。近年は,セリウム(Ce)やランタン(La)などの希土類元素を使いAsを吸着する方法もあるが,CeやLaはレアメタルゆえに高価なことがネックとなっていた。

鉄粉によるAs吸着メカニズム
鉄粉によるAs吸着メカニズム
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