2007年4月30日,米国のハイテク業界が注目していた訴訟で,米国最高裁判所は米国特許の評価手法を大きく変えることを,満場一致で決定した(PDF形式の判定)。この訴訟は,米Teleflex Inc.が自動車のアクセルに関する同社の特許(米国特許番号6,237,565)を,カナダKSR International Co.が侵害したと主張したもの。地方裁判所はTeleflex社の特許は無効と判断した。抗告審判において,米国連邦巡回控訴裁判所は地方裁判所の判定を覆した。今回,米国最高裁判所は米国連邦巡回控訴裁判所の判定をさらに覆して,Teleflex社の特許を無効にした。

 米国の特許法では,特許の基になった発明が,その分野の先行事例と比較して「明らか(obvious)」と判断された場合,その特許を無効にすることが可能である。今回最高裁判所が判定を下した直後に,米弁護士事務所Morrison & Foerster LLP,PartnerのRachel Krevans氏とMatthew Kreeger氏は,「Supreme Court Issues Groundbreaking Ruling Making It Easier to Invalidate Patents as Obvious」と題する解説を発表。両氏によれば,今回の判定は基本的に米国連邦巡回控訴裁判所が1983年から用いてきた,特許が明らかかどうかを判断する手法が有効でないと見なした。これまでの慣例では,その領域で普通の技能を持った人が,先行する事例を参考にして特許が示す発明を実現するために,明示的もしくは暗黙のうちの,指導や提案,動機があることが必要だったという。今回の判定の結果,(1)米国特許庁が申請中の特許の審査を拒否したり,(2)登録済みの特許を見直して特許を無効にしたり,(3)特許侵害訴訟で被告側が自社が侵害したとされる特許の有効性を疑問視したりすることが,以前より簡単になるという。(2)や(3)は,「既存の特許の価値の疑問視につながるので,既存の特許は以前より攻撃を受けやすくなるかもしれない」(同解説)。