欧州委員会の税務当局(TAXUD)は,デジタル・カメラとビデオ・カメラに関する関税分類基準案をEU加盟各国に提示した(関連記事)。この案は,分類の注釈(Explanatory notes)として追加される予定のもの。2007年4月18~20日に開催された会合「Custom Code Committee Tariff and Statistical Nomenclature Section」に提出された。

 CIPA(カメラ映像機器工業会)は,早ければこの会合でデジタル・カメラに対する関税賦課が決まるとみていたが,実際には議論のみで終結した。次回の会合は2007年7月に開催される予定。欧州委員会の税務当局(TAXUD)は次回で決定したい意向だ。

 以下に提出された分類基準案の抄訳を記す。

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【デジタル・カメラ(分類番号:8525 80 30)】

デジタル・カメラは,内蔵メモリまたは交換可能な記録媒体に対して,常に静止画を記録できる。その多くは,伝統的な写真用カメラの外観を備えており,折り畳み式のビュー・ファインダーを備えていない。

デジタル・カメラは通常,動画も撮れる。ビデオ・カメラ(分類番号:8525 80 91および8525 80 99)と比べて,デジタル・カメラは動画撮影時に,低照度環境下の性能が低く,選択肢が限られている。デジタル・カメラの多くは,動画撮影中にズームが効かない。それゆえ静止画の画質は,動画のそれを上回る。

記録媒体の容量によらずデジタル・カメラは,自動的にある期間で撮影を打ち切る。ただし「X」分(低解像度で動画を撮影した時は「X」より長い期間)を超えて,ひと続きのビデオを撮れる機種は,ビデオ・カメラ(分類番号:8525 80 91および8525 80 99)に分類される。

※「X」分:現時点では具体的な値はなく,Xとのみ記述されている。

【ビデオ・カメラ(分類番号:8525 80 91および8525 80 99)】

ビデオ・カメラは,内蔵メモリまたは交換可能な記録媒体に対して,常に動画を記録できる。ビデオ・カメラは一般に,伝統的な映画撮影用カメラの外観を備えている。ビデオ・カメラはしばしば,折り畳み式のビュー・ファインダーを備え,リモコンが添付される。

ビデオ・カメラは,静止画も撮れる。デジタル・カメラ(分類番号:8525 80 30)と比べて,ビデオ・カメラはフラッシュを持たず,動画撮影中にズームが効く。それゆえ動画の画質は,静止画のそれを上回る。
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 欧州委員会の税務当局(TAXUD)は,分類例も示した。三洋電機の「VPC-HD1」は有税のビデオ・カメラに,同社の「VPC-C6」は無税のデジタル・カメラに分類するというものだ。その論拠は「前者は画質がビデオ・カメラ並みだが,後者は劣る。主要機能は前者が動画撮影,後者は静止画撮影」という判断である。

 EICTA(欧州情報・通信・民生電子技術産業協会)によると,関税分類を議論するためCustom Code Committee Tariff and Statistical Nomenclature Sectionに出席したEU加盟国の代表の一部は,測定基準がまだ不明確と感じたという。「EICTAは今回のドラフトに満足していない。TAXUDに対するフィード・バックを準備している」(EICTAでPublic AffairsのDirectorを務めるLeo Baumann氏)。

■日経エレクトロニクスは,2007年5月21日発行号に欧州における事業リスクに関する特集を掲載する予定です。