図1 MPH陣営は,受信機のディスプレイ,受信機を搭載したクルマから見た映像,クルマの移動状況が分かるカーナビのディスプレイなどの映像を組み合わせた映像を見せていた
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図2 Samsung社が出展した小型のA-VSB対応端末の試作機
図2 Samsung社が出展した小型のA-VSB対応端末の試作機
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図3 A-VSB変調方式の説明図
図3 A-VSB変調方式の説明図
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 米ネバダ州ラスベガスで開催中の「NAB2007」では,韓国LG Electronics Inc.と韓国Samsung Electronics Co., Ltd.が,米国や韓国で採用されている地上デジタル・テレビ放送の変調方式である「8値VSB」を拡張した変調方式を用いた携帯機器向け地上デジタル・テレビ放送のデモを見せている。

 LG社はNAB2007の会期中に,携帯機器向け地上デジタル・テレビ放送の新しい規格「MPH」を米Harris Corp.と共同で開発したと発表した。米国や韓国で採用されている地上デジタル・テレビ放送の方式であるATSC(Advanced Television Systems Committee)との互換性を持たせ,放送局に割り当てられる6MHzの周波数帯域の中で携帯機器にも放送サービスを提供できるようにすることが目的という。同社の子会社である米Zenith Electronics Corp.が開発した変調方式である「8値VSB」および「Enhanced VSB(E-VSB)」を基に,LG社とZenith社が変調方式を開発した。映像の編集・送出用の機器やソフトウエアで実績のあるHarris社との協力によってMPHの普及を推進していく。ATSCの携帯機器向け放送の規格として採用されるかは決まっていないが「期待している」(Harris社)とした。

 今回のNABでは,多数のローカル局を抱える米Sinclair Broadcasting Groupの地方チャンネルである「KVCW-DT」をMPH方式で放送し,クルマで移動しながら受信するデモを行っている。展示会場内では,2007年3月に実施した米オハイオ州コロンバスでの実地試験の際に記録した映像を見せていた(図1)。実地試験では,時速55マイル(時速約88km)まで問題なく受信できたという。

 一方のSamsung社が見せているのは,変調方式に「Advanced-VSB(A-VSB)」を採用した携帯電話機向けデジタル・テレビ放送のデモである。A-VSBは,Samsung社とドイツRohde & Schwarz社が協力して普及を推進する変調方式である。2007年1月のInternational CESで出展したものと同じ小型端末を出展し,デジタル・テレビ放送を受信できる様子を見せていた(図2図3)。A-VSBと似たMPH方式が発表されたことについてSamsung社は「性能面で優位な点があると考えているが,MPH方式は詳細が明かされていないので分からない」(説明員)とした。