展示した試作システム。上の装置からデータを下に向けて伝送した
展示した試作システム。上の装置からデータを下に向けて伝送した
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送信側のアンテナ
送信側のアンテナ
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受信側のモジュール(中央)
受信側のモジュール(中央)
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 エムメックスは,60GHzのミリ波帯を使った無線データ伝送システムを試作,2007年4月に開催した「ワイヤレス・テクノロジー・パーク 2007」に出展した。60GHz帯において最大1.5Gビット/秒の速度でデータを伝送できる。「CD1枚のデータなら,5秒間で送れる能力がある」(エムメックス)。今後開発した技術を基に,家電機器メーカーとの協業を進めていく考えだ。

500円程度の受信回路も


 エムメックスは,NRDガイド(Nonradiative Dielectric Waveguide)を用いたミリ波伝送技術を核とするベンチャー企業。NRDガイドは低損失の誘電体線路を実現できる技術で,比較的安価なプラスチック材料を基に構成できることから,ミリ波帯の送受信回路を低コストで実現できると期待されている。東北工業大学 客員教授の米山務氏の研究成果を基に,開発を進めている。

 ワイヤレス・テクノロジー・パークの出展では,映像データを数十cm伝送するシステムを展示した。60GHz帯において1GHz程度の帯域幅を使って送っている。能力的には1.5Gビット/秒で伝送でき,同システムを使えば,非圧縮のHDTV信号を伝送することも可能という。ただし今回の実演では,受信機側のデータの書き込み速度が律速となり,実効的には300Mビット/秒程度の実演となっている。

 変調方式にはASKを使う。送信側のパワー・アンプや,受信側のLNAなどは用いていない。「60GHz帯は最大2.5GHzの帯域幅が使える。広い帯域を利用できるので,複雑な変調方式を用いずASKでも高速伝送できる。またこの程度の距離であれば,NRDガイドを用いた手法ではパワー・アンプなどが無くても十分伝送でき,送受信回路のコストを低減できる。例えば受信専用の回路なら,大量生産すれば500円程度で実現できるだろう。低コストが厳しく要求される家庭用AV機器にも向いていると考えている」(エムメックス 研究開発部長の川原祐紀氏)。同社は今後,さらに速度を3Gビット/秒程度に高めたシステムの実演などを予定している。