「磁場の方向を曲げて3軸を測定」――旭化成エレクトロニクス,1チップ3軸地磁気センサの仕組みを明らかに【訂正あり】
旭化成エレクトロニクスが,同社の3軸地磁気センサ「AK8973」や「AK8973S」などに採用している1チップ3軸地磁気センサの内部構造を明らかにした。同社は,地磁気センサの素子であるホール素子と信号処理回路を1チップに収めた「AK8973」を量産出荷しており,KDDIの携帯電話機が採用している。また,AK8973と同じチップをウエハー・レベルCSPに封止した「AK8973S」を2007年末〜2008年に量産出荷する予定だ。同社のマーケティング&セールスセンター マルチセンサー事業グループ 事業グループ長の山下昌哉氏に,1チップ化を実現した技術について話を聞いた。(聞き手:宇野 麻由子=日経エレクトロニクス)
――今回,3軸地磁気センサを1チップ化はどのような技術によって実現できたのか。
山下氏 主に三つある。まずは磁性体薄膜。次にキャリブレーション用のソフトウエア「DOE(Dynamic Offset Estimation) Algorithm」。最後にセンサ素子としてホール素子を採用していたことだ。
ホール素子は,素子平面と垂直方向の1軸の磁場を検知する。例えば十字型の素子の場合,4つの電極のうち,2つの電極間に電圧を印加して電流を流す。素子と垂直方向に磁場がかかると,いわゆる「フレミングの左手の法則」に従って素子内部の電子が力を受け,電流が曲がって流れるように見える。この結果,電源に接続していない2個の電極の間に電圧が生じる。この電圧が出力となる。
――1軸を検出するホール素子でX方向,Y方向,Z方向の磁場を調べるためには,3個のホール素子を3平面に配置する必要がある。
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図2 ホール素子は垂直方向の磁場を検出する。
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図3 今回の素子は,磁性体薄膜を載せることで磁場を歪ませる。素子と平行な磁場成分(Bx)が素子の位置では垂直方向となるため,ホール素子X1やX2で検出できる。X1で検出されるBx成分とX2で検出されるBx成分は大きさが同じで符号(磁場の向き)が逆になる。これを利用してBx成分と素子と垂直な磁場成分(Bz)を分離できる。
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図4 4個の素子の出力を組み合わせると水平成分の磁場の向き(入射角α)を求められる。
山下氏 そこが技術的なポイントになっている。我々の1チップ3軸地磁気センサでは,ホール素子の向きを検出する磁場の方向に合わせるのではなく,磁場の向きを変える(図1)。具体的には,ホール素子上に透磁率の高い磁性体薄膜を載せて磁場を歪ませる(図2,図3)。磁性体薄膜の端がホール素子上に載るように配置すると,ホール素子上では磁場の水平成分が垂直成分に変換される。この原理を使い,同一平面に4個ホール素子を並べることで,3方向の磁気を検出できる(図4)。
――磁性体薄膜を用いて磁場を歪ませるという発想は,旭化成エレクトロニクスが発案したものか。
山下氏 スイスのSentron社という大学発ベンチャー企業との共同開発から得られた。共同開発は2000〜2002年に行い,電流センサの感度向上や2軸の回転角センサを実現するために磁性体薄膜を採用し,実用化した。その後,両社は別々に地磁気センサの実用化に取り組んだ。
ところが,磁性体薄膜を用いるだけでは,地磁気センサは実現できない。磁性体薄膜の磁化のヒステリシスがオフセットとなり,誤差を生じるためである。前述のSentron社の場合,磁化飽和を生じる大きな磁場を与えることで特性を毎回リセットするという手法を採用したようだ。一方,我々は較正用のソフトウエアDOEを利用することで,このヒステリシスによるオフセットを解消し,実用化に漕ぎ着けた。
――DOEは磁化飽和のヒステリシスを解決するために開発したのか。



















