Chumby試作機
Chumby試作機
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 今回の「O'Reilly Emerging Technology Conference 2007」(ETech)で米Chumby Industries, Inc.は,開発中の新しいタイプの情報機器「Chumby」の詳細を明らかにした。2006年8月26日に米カリフォルニア州で行われたソフトウエア開発者向けのイベント「Foo Camp」で限られた参加者に向けて初めて公開された。Chumby社は製品版を200米ドル以下で2007年6月までに出荷する予定。

 Chumbyは「目覚まし時計」のような形をした握り拳大の機器で,3.5型のTFT液晶ディスプレイを備え,無線LANを使ってインターネットに接続する機能を持つ。組み込み用LinuxをOSに採用し,米Adobe Systems Inc.の組み込み機向けプログラム実行環境「Flash Lite」を搭載しており,「Widget」と呼ぶFlash Liteを使って作られた小さなプログラムを実行できる。ユーザーが好みのWidgetを組み込むことで,Chumbyはいろいろな用途に使える。時刻の表示はもちろん,天気予報やニュース,写真共有サイトの写真画像、指定したブログ,RSS形式のWWWサイトの更新情報などをインターネットから取得して表示するWidgetがすでに用意されている。MP3形式の音楽の再生も可能だが,動画の再生には能力がやや不足するという。

 Chumby社 Chief Executive OfficerのStephen Tomlin氏は,Chumbyの目的を次のように説明する。「ラジオ付き目覚まし時計はどこの家庭にもあって,インテリジェント性に乏しい機器の代表例だ。朝起きる時と寝る前に必ず見ている機器だが何十年と変化がない。我々はこうした機器にこそインターネットの恩恵を導入したら面白いと考えた」(同氏)。

 Chumby社はChumbyのソフトウェアやハードウェアの仕様を「Chumby License」によって公開し,腕に自信があるユーザーに対して,自分でWidgetを作ったり,OSやハードウエアを改変して利用することを推奨している。「Firefoxなどのオープンソース・ソフトウェアの成功を見ても分かるように,環境を公開してユーザーによる改変を許すことで,機器の実用性は加速度的に高まる」(Tomlin氏)と見るからだ。また,ユーザーが作ったWidgetを,ほかのChumbyユーザーに配布するための専用サーバーの運用を始める考えだ。

 Chumbyを購入したユーザーが自分でカスタマイズして使うという用途のほか,Chumby社は今後,服飾や消費財のメーカーやエンタテイメント産業の企業などが広告や宣伝,顧客満足度の向上のために,Chumbyを使う期待もあるとする。例えば,あるロックバンドが専用のWidgetを搭載して,そこでしか提供しない情報を表示するChumbyをファンに販売したり,配布するといった用途である。

 今回,公開されたChumby試作機は3.5型QVGA(320x240画素)TFT液晶ディスプレイを搭載し,CPUコアに周波数266MHzで動作する「ARM9」を採用した米Freescale Semiconductor, Inc.製マイクロコントローラ「i.MX21」を採用している。主記憶として32MバイトのSDRAM,ストレージとして64MバイトのNAND型フラッシュを搭載し,2個のUSBポート,無線LAN,ステレオ・スピーカー,光センサなどを搭載する。ハードウエアは袋状の布に包まれており,ユーザーはこれを「絞って」操作する。