カメラ映像機器工業会(CIPA)業務委員会国際作業部会部会長の薬師寺朗氏(左)。右はCIPA業務委員会国際作業部会メンバーの平文彦氏。両名とも,所属企業はキヤノン。
カメラ映像機器工業会(CIPA)業務委員会国際作業部会部会長の薬師寺朗氏(左)。右はCIPA業務委員会国際作業部会メンバーの平文彦氏。両名とも,所属企業はキヤノン。
[画像のクリックで拡大表示]

 3月16日に既報のとおり,欧州連合(EU)の欧州委員会はデジタル・カメラの域内への輸入に対し,4.9%の関税の賦課を検討している。国内の主要デジタル・カメラ・メーカーが加盟するカメラ映像機器工業会(CIPA)で,この問題の対策チームを率いる業務委員会国際作業部会部会長の薬師寺朗氏と,業務委員会国際作業部会メンバーの平文彦氏に,問題の背景や今後の見通しなどについて聞いた。

――EUで関税化の動きはいつごろ出てきたのか

CIPA 最初に表面化したのは2005年11月。会員メーカーから「欧州委員会がデジタル・カメラの動画撮影機能に着目し,動画撮影ができるのだからビデオ・カメラと同等の4.9%の関税を賦課するべきとの動きが活発化している」との情報が入った。
 CIPAでは早急に対応を検討し,欧州委員会に最も影響力がある欧州の業界団体「EICTA」に,当局との交渉窓口の役割を依頼した。当局はEUに加盟する27カ国の代表者から成る,欧州委員会のEC-NC(品目分類委員会)である。2006年2月に,EICTAのEICTA-TPG(Trade Policy Group)内にこの問題に対する作業部会が発足した。

――当局との交渉はどの程度の頻度で行われているのか

CIPA 毎月一回話し合いがあるというようなものではなく,EC-NCがEICTAに対して質問をしたり,意見を求めるような形式だ。これまでに2~3回質問のやり取りがあった。CIPAでは当局に提出する意見書などを作成するなど,後方支援をしている。

――関税の賦課は避けられそうもないのか

CIPA EC-NCは関税の賦課を前提に,デジタル・カメラの動画撮影機能について一定基準を設け,それを満たすものをビデオ・カメラと同じ分類にしようとしている。つまり,動画撮影機能を持つデジタル・カメラでも関税が賦課されるものと,そうでないものが出てくる見通しだ。
 この基準がどうなるかによって,カメラ業界に対する影響はかなり違ってくる。2007年3月16日に,EICTAはEC-NCに対してこの分類に対する業界案を提出した。現在の情報では,EC-NCは2007年4月18日か19日に結論を出し,早ければ2007年6~7月ごろに施行される見通しだ。

――欧州にデジタル・カメラ・メーカーはほとんど存在しない。EUの狙いは何か

CIPA 財源の確保だろう。欧州は世界の約1/3を占めるデジタル・カメラの最大の市場で,その大半のシェアは日本製品が握っている。

――関税賦課の影響をどう見ているか

CIPA 影響は非常に大きい。EC-NCが定める分類の基準がどうなるかにもよるが,2006年にCIPAの会員各社が欧州向けに出荷したデジタル・カメラに対する関税総額は,最大で230億円と試算される。さらに,EUは施行日から3年さかのぼって徴収する方針なので,施行前の分だけで関税総額は最大690億円に上る。

■関連記事
欧州連合がデジカメに4.9%の関税賦課へ