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ヒロボーと千葉大学,中国電力の3者が共同開発した送電線無人ヘリ巡視システム。操縦するのでなく,自律航行で,プログラムした通り送電線に沿って飛行する。送電線の写真を撮って,画像を無線で地上に送ってくる。これで送電線を巡視・点検する手間を大幅に省ける。今まではヘリに人が乗ったり,徒歩で登山していたりしたのだから差は大きい。その技術のルーツはアフガニスタンやカンボジアでの地雷除去にあった。

 ヒロボーが,やってくれた。顧問としてお付き合いのある企業が元気なのはコンサルタントみょうりに尽きるね。

 今回発表したのは送電線を検査する無人ヘリコプター「SKY SURVEYOR」だ(図1)。共同研究のパートナーである中国電力は検査のコストを半減できるのではないかと期待している。何しろ,今は有人のヘリに社員が乗って巡視している。上から目視で確認できるのはいいんだけど,ヘリをチャーターするわけだからものすごく高くつく。しかも原則,計画的に利用するしかなく,急にチャーターするわけにはいかない。天候が悪ければ危険で飛べない。


図1●自律航行無人ヘリによる送電線点検の様子


図2●素線が切れた状況

 仕方なく,地上から調べに行くこともある。高圧の送電線が通っているのは多くが深い山の中だ。登山をするようなものだから時間と手間がかかる。

 高圧の送電線というのは,本当の送電線の上にアース線が1本通っている。送電線に落雷させないための避雷針みたいなものだから,当然雷はここに落ちる。すると,傷んでほつれることがある(図2)。それを早く発見し,修理しないと,そこにどんどん落雷しちゃうから,大変な手間をかけて検査していたわけだ。ほかに,鉄塔などの送電設備も点検できる(図3)。電力会社以外の使い方では,火災や噴火など,危険で有人のヘリが近づけないときの情報収集にも使える(図4,5)。


図3●鉄塔の写真も撮れる


図4●災害の情報収集に使う


図5●噴火時は有人のヘリコプターは近づけない