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ピッチ3.175mmという世界最小のチェーン。自動車のカム軸駆動用が標準で9.525mm,最小でも6.35mmだから,その半分以下という細かさだ。開発に着手した時,用途は見えていなかった。それでも結果として用途はついてきた。チェーンへのこだわりがあったから,できたのだろう。

 「まるでネックレス」と言い切るには,ちょっとごついかな(図1)。ピッチが3.175mmというチェーンがある。飾りじゃなくって,れっきとした工業用,動力を伝達するチェーンだ。ピッチは世界最小だろう。

 造ったのは石川県白山市にあるオリエンタルチエン工業。平成の町村大合併で聞き慣れない名前になっちゃったけど,昔の名前でいえば松任市だから,金沢市の隣ということになる。

お国のためにものを作る

 創業は1947年,もともとは自転車のチェーンを造っていた。中島,三菱など,もともと財閥だったような会社が自転車を造っていたころのことだ。チェーンが輸入物で,かなり高かったので国産化したい。「チェーンを造るプラントを造ってくれ」と当時の商工省から頼み込まれて造った。自転車は戦後の復興にはずいぶん役立ったと思うよ。戦時賠償のために必要な物資でもあった。今では善からぬイメージもあるけれど,「国策会社」というのは志の高い立派なビジネスモデルだったんだ。

 その後,「チェーンを造るプラント」から「チェーンそのもの」に仕事を広げた。さらにバイクの産業が立ち上がるのに合わせてバイクに進出した。ホンダの250ccバイクがマン島のレースで1位から5位までを独占したことがあったよね。ものづくりにとっては“歴史的事件”といってよい。あの時使っていたのはオリエンタルのチェーンだったというから,すごい。