MaxBandを実装したPCカードやmini PCIカードなど
MaxBandを実装したPCカードやmini PCIカードなど
[画像のクリックで拡大表示]
MaxBandのブロック図
MaxBandのブロック図
[画像のクリックで拡大表示]

 日商エレクトロニクスは,米RedDot Wireless Inc.(RDW社)の無線LANとWiMAXの統合LSI「MaxBand」のOEM販売を3月に日本で開始したことを明らかにした。無線LANのIEEE802.11a/b/gと,固定通信向けWiMAXのIEEE802.16-2004に準拠したMAC層回路およびベースバンド処理回路を1チップ上に集積したもの。日商エレクトロニクスは同LSIの販売で初年度3億円の売り上げを見込んでいるという。価格はまだ決めていない。

 MaxBandは,256ポイントのFFTを4種類の無線仕様で共用する構成を取る。消費電力が300mWと非常に小さいがこれは「無線仕様の深いところまで知り尽くして設計したため」(RDW社)と説明する。ダイの寸法は明らかにしていないが,パッケージの寸法は14mm×14mm×1mmである。無線仕様のほかに,IEEE802.11作業部会が策定した通信品質の確保技術「IEEE802.11e」やセキュリティ技術「IEEE802.11i」,日本の5GHz帯に合わせた仕様「IEEE802.11h」などにも対応している。

 物理層のチップは,現時点では各国や地域の無線周波数や規制に合わせて用意し,必要に応じて差し替えて利用する。

 今後,RDW社は2007年中に,90nmルールのCMOS技術を用いて「MaxWave」「MIMOBand」「TripleNBand」といったLSIを次々に開発する計画である。MaxWaveは,2.0G~4.0GHz,4.9G~5.9GHzの周波数に対応するトランシーバLSI。MIMOBandは,無線LANに加えてモバイルWiMAX「IEEE802.16-2005」の仕様にも準拠しMIMO技術に対応したMAC層およびベースバンド処理LSI。TripleNBandは,MIMOBandのLSIにさらにIEEE802.11nの仕様を実装したLSIである。

 さらに2008年には,65nmルールのCMOS技術を用いてトランシーバ回路とMAC層およびベースバンド処理回路を1チップに集積した「MaxDuet」,パワーアンプさえもチップ上に統合して各種の無線機能を完全に1チップ化した「UltraDuet」などを開発していくという。

実態は台湾メーカー

 RDW社は2002年に設立した,本社が米国シリコンバレーにあるベンチャー企業である。ただし約100人いるという従業員の相当数が台湾系または台湾人で,研究開発拠点も台湾と中国にあるというやや異色の半導体の設計メーカー。「関連特許は50以上持っている」(同社)といい,開発が予定通りに進めば無線通信の分野で台風の目になる可能性がある。