「Game 3.0を推進するのは，ネットワークでつながったゲーム機によって生まれる動的なコンテンツとそれを支えるユーザーのコミュニティーだ」。ソニー・コンピュータエンターティンメント（SCE）の事業部Worldwide Studios，PresidentのPhil Harrison氏は，米サンフランシスコ市開催中「Game Developers Conference 2007」（GDC）の基調講演においてゲーム開発者に対し，「プレーステーション3（PS3）」の普及に向けたビジョンをこのようにアピールした。「Web 2.0」を基に発想したGame 3.0を，米国市場でも人気の高い任天堂の「Wii」に対抗するためのカギと位置づける。
コンテンツ配信を強調する「Home」の3次元世界
Harrison氏は基調講演で，Game 3.0のコンセプトに向けてSCEが開発した，3次元の仮想世界の中でユーザーが動く「Home」と呼ぶゲームを公開した（発表資料その１）。Homeの遊び方は，最近注目を集めている米Linden Research, Inc.の「Second Life」に似ている。インターネットに接続したPS3を使って自分の分身であるアバターを操作し，他のユーザーのアバターと仮想世界で交流する。さらに，SCEは3次元の仮想世界を体験する場としてだけでなく，他のゲームや動画などのコンテンツを楽しめる環境として育てるもようである。Homeはインターネットを通じて無償配布する。2007年4月にベータ版を公開し，2007年秋ころに全世界向けに正式に公開する予定となっている。
Homeの中でユーザーは，SCEの携帯型ゲーム機「PSP」の形をした「Virtual PSP」というツールを操作することで，自分のアバターやアバターが住める仮想アパートなどを自分の好みに合わせて変更できる。例えば，自分のアパートの中にテレビを置くと，PS3のHDD内に保存してある動画コンテンツを再生できる。Home向けのオブジェクトには，無償提供するものと有償で提供するものがある。
アパート以外にもHomeの中には，ユーザーの溜まり場となるいくつものスペースを設けている。例えば「Home Theater」というスペースでは，複数のユーザーが一緒に動画コンテンツの視聴を楽しめる。Home Theaterの中では，米Sony Pictures Entertainment社が2006年8月に買収した米Grouper Networks, Inc.が運営する，投稿動画の配信サイトから動画を提供する予定があるという。このほか，ゲーム企業や消費者向けのブランドを扱う企業などが，独自のスペースを作れる環境を用意するという。
コミュニティで作れるゲーム「LittleBigPlanet」の高い評判
基調講演の中でHarrison氏は，コミュニティの力を利用するもう一つのゲーム「LittleBigPlanet」も紹介した（発表資料その2）。英Media Molecule Ltd.が開発したゲーム環境で，ユーザーがゲーム内のキャラクターを操作しながら，簡単にゲームを作成したり変更したりことができるという。例えば，ゲーム内の空間に新しいオブジェクトを置くといった操作を通じて，新しいゲームを作成できる。今後にユーザーが作成されたLittleBigPlanet環境内のゲームをインターネットに公開して，ユーザーが評判を着けることにする。
LittleBigPlanetが提供するゲーム環境では，ユーザーが置いたオブジェクトの物理的な振る舞いを個々のユーザーの設定に応じて再現する必要がある。このためには，PS3が内蔵するCellの演算性能が力を発揮するという。基調講演に参加したゲーム開発者の間では，LittleBigPlanetの評判は高いようだった。LittleBigPlanetのデモ版は2007年秋ころ，正式版は2008年初めに公開する予定という。
