昭和電線ケーブルシステム,イットリウム系超電導線材をバッチ炉で製造する方法を確立
昭和電線ケーブルシステムは,国際超電導産業技術研究センターと共同で,長さ200mのイットリウム系超電導線材を電熱バッチ式熱処理製造法により作製することに世界で初めて成功した(図1)。
今回の成果は,超電導層を気相プロセスではなく,溶液を塗布してバッチ炉で作製できるようになったこと(図2)。200mの線材をバッチ炉に入れれば20時間程度で焼成できるため,製造速度は1時間当たり10mを達成したことになるという。これは,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から2005〜2007年度に受託している「超電導応用基盤技術研究開発プロジェクト」での開発目標の2倍の製造速度になるとしている。
今回開発した超電導線材は,イオンビームアシスト蒸着(IBAD)法で中間層を付けたハステロイ基板の上に厚さ1μmの超電導層を溶液塗布熱分解法で作製した。具体的には,イットリウム(Y)とバリウム(Ba)を3フッ化酢酸塩に溶かしたものと,銅(Cu)をナフテン酸塩に溶かしたものを混ぜた溶液を中間層付きの基板上に塗り,基板をドラム缶のような円筒物にらせん状に巻いて450℃で焼成(仮焼)し,また溶液を塗って仮焼する作業を8〜9回程度繰り返す。その後,らせん状に巻いた基板を750℃程度まで温度を上げた電気式バッチ炉に入れて熱処理する(図3)。熱処理する際には,水蒸気やppmオーダーの酸素を含むAr(アルゴン)ガスを吹き付けながらフッ素などを速やかに排出しつつ,均一に酸化させる必要があるという。
これまで,超電導層となるYBa2Cu3O7−Xは,その構成比と同様に原料もY(イットリウム)に対して,Baを2倍,Cuを3倍という具合に配合してきた。だが,超電導工学研究所の研究により,配合する原料のうちBaを1.5と少なくすることで,高品質のYBa2Cu3O7−Xを作製できる上,焼成する温度が705〜750℃の間であれば,品質が安定することを見出した。これにより,バッチ炉で作製しても長さ200mの線材で臨界電流値200A/cmという特性を達成できたとしている。この値は1cm2当たりに200万Aの電流値を流していることに相当し,従来のビスマス系超電導線材と比べて100倍の電流密度を備えているという。昭和電線ケーブルシステムでは今後,バッチ炉を大型化して長さ500mの線材の製造を目指すとしている。
低コスト化を目指すイットリウム系
イットリウム系超電導線材は,安価な液体窒素中(−196℃)の温度でも超電導状態となる高温超電導体で,ビスマス系超電導材と共に注目を浴びている。イットリウム系超電導材は,ビスマス系に比べて臨界電流密度が大きく,より大きな磁場をかけることができる。さらにビスマス系が被覆材に高価な銀を使用するのに対して,イットリウム系は材料コストが安いため将来的には低コスト化できるといわれている。
ただし,ビスマス系と比べてイットリウム系は結晶の向きをそろえる(配向させる)のが難しいという課題がある。ビスマス系は,粉末の材料を銀パイプに詰めて圧縮するだけで簡単に配向するが,イットリウム系ではこうした機械的加工だけでは十分に配向しない。そのため,Ni合金基板の上に,結晶の向きがそろった中間層を積層する必要がある。この中間層を形成するのにフジクラが開発したIBAD法などが利用されているが,真空工程が必要となるので設備コストが高くほか,蒸着に時間がかかる問題などがあり,超電導層の形成と共に実用化への課題となっている。


















