米国の調査会社iSuppli Corp. によると,世界における携帯電話加入者数は2004年から2006年まで年間平均成長率25%程度で増加したが,この成長は2007年には12.8%まで低下するという(発表資料)。加入者数の減速は今後数年間続き,2008年には9.6%,2009年には7%,2010年には5.7%まで減少する見込みだという。

 加入者数の減速とともに,携帯電話機の生産台数も減速している。2004~2006年の世界における携帯電話機の生産台数の年間平均成長率は19.3%だったが,2007年の成長率は9.1%を見込む。同社は今後の成長率を2008年で6.9%,2009年で4.8%,2010年で3%と予測する。

 この加入者数の世界的な減速の主な要因は,世界の先進地域の携帯電話加入者が飽和状態近くまで達していることだという。2006年の携帯電話機の普及率は北米で93.2%,韓国で83.2%,日本では74.2%だった。一方,発展途上国や地域の携帯電話機の普及率は低く,南米では48.3%,中国では24.4%,アフリカ,中東,オーストラリア地域では23.6%,インドでは13.5%である。しかし,この状況は急速に変化している。iSuppli社は,2010年の携帯電話機普及率を,南米で65.5%,中国で36.6%,アフリカ,中東,オーストラリア地域で34.8%,インドで31.5%と予測する。

 今後3年間で加入者を増加させるためには,無線通信事業者は普及率の低い国々に進出する必要がある,と同社は分析する。そして,発展途上国の普及率の成長に乗って収益を上げる鍵は,コストが40米ドル以下のローエンド電話機ULCH(ultra low-cost handsets)を提供することだという。多くの携帯電話機メーカーが,30~40米ドルの価格の携帯電話機でULCH市場に参入している。また,半導体メーカーもULCHのためにシングル・チップの半導体を提供し始めているという。

 世界的に新たな加入者が減る中で,通信事業者は先進地域の既存の顧客からより多くの収益を上げる必要がある,と同社は分析する。収益増加の方法の一つとして,ARPU(1契約当たりの月間平均収入)の増加を挙げる。高いARPUを得るためには,無線通信事業者はインターネット接続やモバイル・テレビ,音楽再生機能など音声通話以外のサービスの拡充が必要だとする。iSuppli社によれば,2005年に77億米ドルだった音楽や動画,ゲームといった携帯電話機のコンテンツ市場は,2010年までに360億米ドル近くまで成長するという。