Barry Diller氏
Barry Diller氏
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 米国ニューヨークで2007年2月7日~8日に開催されている「2007 Media Summit New York」では,デジタル技術とメディアの融合が話題の中心になっている。初日となった7日にまず舞台に立ったのは米Fox Broadcasting Co.を設立したメディア業界の重鎮である,米IAC/InterActiveCorp社 director 兼Chairman and Chief Executive OfficerのBarry Diller氏だった。

 米Google Inc.傘下の米YouTube, Inc.に対し,米Viacom Inc.が自社が著作権を有する多数のコンテンツをYouTube社のWWWサイトから削除することを依頼したというニュースについて,Diller氏はGoogle社はYouTube社を買収する前に,動画コンテンツ大手企業と数カ月にわたって交渉を行ったことを明らかにした。しかし,交渉は物別れに終わったという。「(ケーブルテレビの黎明期に)ケーブルテレビで自社のコンテンツを放映したい映画会社は,業界で当時独占的な地位にあった米Home Box Office, Inc.(HBO社)に対し,言い値で金額を支払うことが避けて通れなかった。動画コンテンツ業界は,流通事業者にこうした権力を2度と持たせてはいけない」(Diller氏)。同氏は今後はYouTubeのようなWWWサイトを通じて動画コンテンツを合法的に配信するために,いずれコンテンツ業界が広告や小額決済の課金モデルを構築する用意があると指摘した。

 オンライン配信が象徴する新しい動画配信手法が登場しても,テレビ・コンテンツ業界の未来は明るいとDiller氏は主張する。「しかし,今後は大いなる挑戦をしなければならない。新しいビジネス・モデルなどを生み出すには,いったん業界の中に『破壊』が起こることは避けられない」(同氏)。テレビ・コンテンツの流通を握る現在のビジネス・モデルは10年間後にはなくなるという。「今後革命的な変更が必要だ」(Diller氏)。

 またDiller氏は,現在の台頭しているコンテンツ流通のベンチャー企業の中には,「バブル状態」のものがあるという。「こうした企業が望む企業価値はとてつもなく高い。それでも,今市場に参入しないといけないとあせる気持ちが多額の投資につながっている」(同氏)。しかし,Diller氏は2000年ごろのネット・バッブルと違って,現在のオンライン・メディア企業は確実に売り上げを確保しているので,状態は根本的に違うと主張する。「視聴者と売り上げをきちんと保有する企業は実力を発揮するはずだ。そうすればバブルは消えて健全な状態に戻る」(Diller氏)。