知的財産に関する民間の検定制度「知的財産検定」(関連記事1同2)を,国家検定にするための準備が大詰めを迎えている。同検定を実施する知的財産教育協会によると,厚生労働省が所管する「技能検定制度」に組み入れてもらう方向で調整中とする。2008年から新体制に移行することを目指す。

 日本が“知財立国”を目指すためには,大手企業だけではなく,中小企業が知財の実務能力を高めなくてはならないとの指摘が多い。知的財産検定が創設されたのも,このような中小企業の能力を高める狙いがあった。しかし,実際に知的財産検定を採用する企業は大手がほとんどである。この理由として,知的財産教育協会は「民間検定であること」を挙げている。民間検定の場合,検定の質や評判などを中小企業が自ら調べなくてはならず,負担が大きい。これに対し,国家検定であれば,国が認めていることから中小企業でも採用が広がる可能性が高い。

 合格者は国家資格「知的財産マネジメント技能士(仮称)」を名乗れるようになる。これまで知財分野の国家資格としては「弁理士」があったが,試験が難しいことに加え,法律の知識を中心に問う内容であるため,法務の専門家以外にとっては敷居が高かった。これに対して,知財検定は法務部門だけではなく一般の技術者などが日常の業務の中で活用できるように,知財に関する実務的な内容を問う内容となっている。知財に関心を持つ技術者が増える中で,知財検定が国家試験となれば,技術者の学習意欲をさらに高める効果が期待できる。

 試験の内容に関しては,国家検定になった後,大きく三つの変更点が出てくる。第1に,これまでの「1級」「2級」に加えて,「3級」を新設する。第2に,受験資格として一定の実務経験が必要になる。ただし,2002年に新設された技能検定である「ファイナンシャル・プランニング技能検定」の例を考えると,3級に関しては実務経験を問わず,一般の社会人・学生も受験できるものとなる可能性が高い。第3に,試験の実施形式は学科試験(筆記)と実務試験の二つに分かれる。これまでは筆記で学科試験と実務試験の両方を兼ねていた。