図1◎ 2006年の市場の分野別の比率(推定値)
図1◎ 2006年の市場の分野別の比率(推定値)
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表1◎ 前年との比較など
表1◎ 前年との比較など
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 2006年の米国アダルト・エンターテインメント市場は129億2200万米ドルで前年比2.4%増---。「2007 International CES」とほぼ時期を同じくして開催された展示会「AVN Adult Entertainment Expo(AEE)2007」(通称,裏CES)を前に,同展示会を主催する米AVN Media Networkは,2006年の米国アダルト・エンターテインメント市場に関する推定値を発表した(Tech-On!の関連記事)。

 全体としては微増だが,その構成比は大きく変化しつつある(図1)。例えば,同市場で最も大きな比率(28%)を占めるのは依然としてビデオ/DVD販売・レンタルの分野で36億2200万米ドルだが,前年比15.4%減と急速に落ち込んだ。雑誌(デジタル・マガジンを含む)も同5.0%減の9億5000万米ドルと振るわない。

 こうした旧来のメディアが落ち込む一方で,伸びているのはケーブルテレビ/PPV(pay per view)の分野や,インターネットのコンテンツ販売分野である。

 ケーブルテレビ/PPVの分野(ビデオ・オン・デマンドやホテル内でのPPVなども含む)は,17億4500万米ドルで前年比34.2%増と好調である(図2)。急速な伸びにより,全市場の13.5%を占めるまでになった。インターネット分野(契約型の映像ダウンロードやライブ・ストリーミングなどを含む)も前年比13.6%増と伸びて28億4100万米ドルになり,いまやビデオ/DVD販売・レンタル分野に次ぐ市場に成長した(構成比は22.0%)。

 こうした変化を,AVN Media Networkの社長であるPaul Fishbein氏はこう分析する。「顧客はいまや,さまざまな配布手段を選べる。映像コンテンツを実際の小売店に買いに行くより,インターネットを使って一人で購入し,視聴したい人は多い」。通常のテレビ番組や映画と異なり,リビングの真ん中で視聴するというより,自分の部屋で見たいといったニーズも強い。なるべく他人に知られることなく,個人で楽しみたいといった事情から,新しい技術が比較的早期に受け入れられるのがアダルト市場の特徴だ。

販売本数は増えているのに…

 ただし同社は,ビデオ/DVD販売・レンタルが単純に落ち込んでいるのではないと,さらに深い分析を行っている。実際,ビデオ/DVDの販売本数を調べると,前年よりも増えているという。それではなぜ15.4%も市場規模が縮小したかというと「流通の中抜きが急速に進んだため」(同社)と説明する。「従来はコンテンツを制作するスタジオから配給会社,配給会社から小売店へ,そして小売店から消費者へと3段階を踏んで販売されていた。しかしこのところ,スタジオが直接に消費者に販売するという中抜きが起こっている。これにより,販売本数は増えているのに市場規模が急減したように見えているのだ」。

 したがってスタジオの収入は依然として好調だという。さらにPPVやインターネット上のダウンロード・サイトへのライセンス料など新たな収益源も拡大しているので,ビデオ/DVD販売・レンタルへの過度な依存からも抜け出しつつあると分析している。一方,小売店は2006年に極めて厳しい状態に陥ったとする。

ほかにも伸びている分野が

 AVN Media Networkによると,このほかにも伸びている分野がある。携帯電話網を用いたサービスの市場と,いわゆる「大人のおもちゃ」などの市場である。

 携帯電話網を用いたコンテンツ販売の市場は2006年に3900万米ドルで,前年に比べて11.4%も増えてはいる。しかし,市場全体からするとまだ1%以下でしかない。米国では,データ伝送速度の低い携帯電話がまだ主流である。いわゆる3Gサービスが普及するなどの基盤整備を待たないと急拡大はむずかしいとする。このほか,オーストラリアやイギリスで,携帯電話機に対する過激なアダルト画像を配信するサービスを禁止する法律ができたことや,米国において携帯電話向けコンテンツの「レーティング」の仕組みなどが整備されていないといったことも,携帯電話網によるサービスにとって高いハードルになっている。

 大人のおもちゃ市場については,新規メーカーの参入などによる刺激もあって伸びているという。2006年は17億2500万米ドルで15.0%増である(小売り,インターネット販売,カタログ販売などを含む)。「(対面せずに購入できるようになってきたこともあって)特に女性の購買が活発になってきているようだ。この分野は,アダルト・エンターテインメント市場の中でもホットな成長分野」(Paul Fishbein氏)という。