試作ディスク
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レーベルフラッシュの例(DVD-R)
レーベルフラッシュの例(DVD-R)
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 富士フイルムのブースは,Las Vegas Convention Center(LVCC)のメイン会場とは少し違うNorth Hall会議室という目立たないところにあった。ここで筆者は,有機色素型の追記型Blu-ray Disc(BD-R)を発見した。

 追記型CD(CD-R)も追記型DVD(DVD-R,DVD+R)も,記録膜には有機色素を使っている。しかし,光源として青紫色レーザを使うBlu-ral Discでは事情が異なる。既にBD-Rのビジネスは始まっているが,現在まで市場に出ている媒体は,すべて記録膜を無機材料で作製した(無機型)なのである。ちなみに,書き換え可能なCD(CD-RW)や同DVD(DVD-RW,DVD+RW,DVD-RAM)などは無機型である。

 富士フイルムは,写真フィルムの材料研究から発した企業なので有機材料に強い。これまでBD-RではTDKが無機型の開発を強力に進めたので,BD-R=無機型というイメージが強いが,富士フイルム関係者は「生産性が大きなメリットです。DVDなどで築いた有機色素型の世界をぜひ次世代のBD-Rでも展開したい」と熱く語ってくれた。現在有機色素型は,規格団体のBlu-ray Disc Association(BDA)で最終検討の段階に入ってる。

 BD媒体はHD DVD媒体に比べて生産性が劣ると,今まで攻撃されてきた。それはROMだけにとどまらず,無機型BD-Rはコストが高いというのも,HD DVD側が追及していたことだ。しかし有機色素型が実現できれば低コスト化が期待でき,BDの世界を一挙に拡げる起爆剤になると期待される。エアチェックした素晴らしいハイビジョン・コンテンツのデータを,まずはハード・ディスク装置(HDD)に置いたまま簡単な編集(CMカットなど)し,それをアーカイブとしてBD-Rに焼くという使い方が一般的になるとみられるからだ。

 もうひとつ,この展示では,BD-Rに対して一般消費者に分かりやすい独自機能を付加しようという提案も行っていた。同社独自のディスク表面印刷技術「レーベルフラッシュ」である。ディスクのレーベル側にも有機色素層を設け,パソコンとBlu-ray Disc装置を使ってレーザ光で写真レベルの精緻な模様を書き込むというものだ。これによって,富士フイルム・ブランドを一般消費者に直接に訴えかける作戦だ。今回の展示には,BD-Rの開発競争で出遅れた富士フイルムの挽回作戦という意味を強く感じ取ることができた。