図1 Warner社が発表した「Total Hi Def」ディスク
図1 Warner社が発表した「Total Hi Def」ディスク
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 家庭用の映像パッケージ・メディアを販売する米Warner Home Video社は,Blu-ray DiscプレーヤーでもHD DVDプレーヤーでも再生できる光ディスク媒体「Total Hi Def」を発表した。片面にBlu-ray Discフォーマットのデータを,もう片面にHD DVDフォーマットのデータを格納する。同社は「2007 International CES」で開催した記者会見で,この媒体を実際に各社のプレーヤーで再生するデモを見せた。2007年後半から販売する。

 Warner Home Video社は,Total Hi Def対応のパッケージ・メディアを販売することで「次世代DVDの規格争いに対する消費者のとまどいや買い控えを解消できる」(Warner社)と主張する。Total Hi Defのコンテンツを買えば,最終的にいずれの規格が勝ち残っても,ライブラリが無駄にならないというわけだ。Total Hi Defメディアの価格は通常の媒体より高くなる見込みだが,具体的な店頭価格については明らかにしなかった。

 Warner社がTotal Hi Defを採用した背景の一つには,小売店からの強い要請があったとみられる。Warner社は一つの映画コンテンツをBlu-ray Disc,HD DVD双方に供給している。だがこれでは,小売店の棚を1コンテンツ当たり2倍占有することになる。Total Hi Defを採用することで,小売店の棚の占有面積が抑えられ,面積当たりの販売効率を高められるというわけだ。小売店では,Best BuyやTrans World Entertainmentが同媒体に賛意を表明した。

 Total Hi Defを採用するのは,Warner Home Video社のほか,同じく米Time Warner傘下の米New Line Home Entertainment社と米HBO社である。他の映画業界へのラインセンスも「Welcomeだ」(Warner社)とした。

いずれの規格も単層/2層に対応

 Blu-ray Discフォーマットの容量は25Gバイト(単層)か50Gバイト(2層),HD DVDは15Gバイト(単層)か30Gバイト(2層)いずれも選択できる。

 ディスクの製造方法は以下の通り。最も単純なのがBlu-ray Disc,HD DVDいずれも単層である場合である。まず,Blu-ray Discのピット・パターンを転写した厚さ0.6mmのポリカーボネート基板と,同じくHD DVDのピット・パターンを転写した0.6m基板を射出成形機で製造。その後,それぞれの基板に反射膜を蒸着して,この2つの基板を張り合わせる。このとき,2層DVDのようにピット・パターン同士を向かい合わせに張り合わせるのではなく,Blu-ray Discのピットパターンが表面に露出するよう裏返しに張り合わせる。最後に,Blu-ray Discのピット・パターンの表面に0.1mmカバー層を形成する。

 それぞれの記録層を2層化するには,基板の張り合わせを行う前に2層目を形成する。2層化の工程はBlu-ray Discの2層化と同じく,いわゆる2P法を用いる。具体的には,1層目のピット・パターンの上に紫外線硬化樹脂を塗布した後,透明のPMMAスタンパを上から押し付けて2層目のピット・パターンを転写,さらにスタンパの上から紫外線を照射して樹脂を硬化させる。

 Total Hi Def対応ディスクの製造は,当面の間はカナタCinram International Inc.が単独で行うもよう。現行の試作品は,射出成形から張り合わせまでを既存のHD DVD-ROM製造ラインで行った後,Blu-ray Discラインまで基板を運び,0.1mmカバー層を形成している。2007年4月ごろまでには,この工程を完全にインライン化するという。