「この日を2年半待っていた」。米Apple, Inc.のCEOのSteve Jobs氏は,米国サンフランシスコで開催中のMacworld Conference and Expoの基調講演で,業界の事前の予測通りに携帯電話機「iPhone」を紹介した(発表資料その1)。キーパッドを搭載しておらず,ほとんどの操作は320×480画素の3.5型のタッチスクリーンで実行する。OSは同社の「OS X」(バージョン名は未公開)。同社はOS Xをパソコン以外の機器に初めて採用したことになる。このOS上に,音楽やビデオ,写真を再生するiPodの機能や,携帯電話機,電子メール,WWWブラウザ,SMSなどのソフトウエア機能を実装した。対応する無線ネットワーク技術はGSMとEDGE,IEEE802.11b/g,Bluetooth 2.0である。電池の寿命は電話や動画再生,WWWブラウザの操作をした場合に5時間,音声の再生では16時間という。なお同氏は,社名をApple Computer, Inc.からApple, Incに変更したことも発表した。
米国市場では対応する携帯電話事業者はCingular Wireless LLCのみ(発表資料その2)。ユーザーはCingular社と2年間の契約を結ぶと4Gバイトのメモリを搭載する機種を499米ドル,8Gバイトの機種を599米ドルで購入できる。米国での出荷予定は2007年7月。欧州では2007年末までに登場するという。Apple社によると,2008年中にアジア地域でiPhoneの出荷を開始する予定だが,具体的な国名は未公開である。
3種類のセンサとタッチスクリーンを利用
開発に2年半をかけたiPhoneの機能の中で特に目立ったのはユーザー・インタフェース(UI)である。iPhoneは本体に加わる加速度,ユーザーの頭との接近,周辺の光を検知できる3種類のセンサを備え,UIに利用している。例えば,ユーザーが電話をする際に端末を耳に近づけると,ディスプレイの表示を自動的に消す。これにより消費電力を節約するとともに,ユーザーの顔がタッチスクリーンに触れることによる誤入力も防げるという。
Apple社は,iPhoneのためにタッチスクリーンを用いた「Multi-touch」と呼ぶUIを開発した。ペンなどの代わりに,ユーザーの指で操作できる。画面上で指を動かすことで,写真や音楽を表す複数のアイコンをスクロールして表示・選択できる。画面上で親指と人差し指を動かしたり画面を叩いたりすると,画像の選択や拡大・縮小などができる。
Apple社によればiPhone用に専用LSIを開発したというが,詳細は未公開。マイクロプロセサも未公開である。Apple社によると,iPhone用の独自技術のため200以上の特許を取得したという。