Blu-ray DiscとHD DVDという二つの次世代DVD規格に対応したプレーヤーが遂に市場に投入された2006年。次世代DVDプレーヤー元年と言えるこの年に,両陣営はそれぞれどのような成果を挙げたのか。「2007 International CES」で開催された記者会見や関係者への取材から,2006年の次世代DVD戦争を総括してみよう。

 2006年に出荷されたHD DVDプレーヤー/レコーダーは,北米で17万5000台,世界全体では37万台に達するという。一方,Blu-ray Discプレーヤー/レコーダーの販売台数は,北米のみの数字で100万台強,世界全体では200万台以上とみられる。ただし,「この出荷台数の大部分はプレイステーション 3が占めている」(Blu-ray Disc Associationの説明員)ことを割り引いて考える必要がある。HD DVDプレーヤーの数字もパソコン用装置やXbox 360用の外付け装置を含んだ数字であり,単純な比較はできない。

 では,コンテンツのタイトル数はどうか。2007年1月現在,北米で入手可能なタイトルは,HD DVDが約130タイトル,Blu-ray Discが約180タイトルである。特にBlu-ray Discは,米Universal Studios, Inc.を除くほとんどの大手米映画会社が人気コンテンツを供給している。魅力あるコンテンツの拡充についてはBlu-ray Discが一歩リードしている印象だ(図1)

 一方で,パッケージの週当たりの出荷本数については,現在のところ両陣営がほぼ互角の戦いを演じている。Blu-ray Disc陣営の発表によれば,Blu-ray Disc再生機能を持つPS3が発売される2006年11月以前までは,週当たりの出荷本数でHD DVDの方が勝っていたという。2006年末までにはBlu-ray Discの出荷本数がHD DVDを抜いたが,その差は20%ほどにとどまる。

2007年,中国企業の参入で廉価版HD DVDプレーヤーが登場

 次世代DVDを巡る2006年の規格争いは,まだ前哨戦の域を脱していない。2007年には,両陣営とも再生機器の出荷台数を2006年より1ケタ以上高めることを狙っているからだ。

 HD DVD陣営は,2007年のHD DVDプレーヤー(パソコンやXbox 360に向けた装置を含む)出荷台数について,北米だけで250万台以上を見込んでいることを明らかにした。「どう悲観的に見ても,180万台以上は確実に出荷できる」(東芝 執行役上席常務 デジタルメディアネットワーク社 社長の藤井美英氏)。出荷台数が一気に伸びることで,北米でのパッケージ・メディアの売上高は2006年の40倍となる6億米ドルになると予測する。

 HD DVDプレーヤーの出荷台数を増やすための秘策としてHD DVD陣営が掲げたのは,中国/台湾メーカーの新規参戦である。中国Shinco社,香港Alco Electronics(ブランド名:Venturer),中国Jiangkui Group(同ED Digital),台湾Lite-On社が,2007年末までに北米市場に向けて自社ブランドでプレーヤーを投入する。米Microsoft Corp.と米Broadcom Corp.がHD DVDプレーヤーのリファレンス・デザインを開発したことで,中国/台湾各社の参入が容易になったという。「中国や台湾のメーカーが作るHD DVDプレーヤーは,廉価品として東芝のプレーヤーより安価な価格で提供されるだろう」(東芝)。これに加えて,米Meridian Audio社やオンキヨーがHD DVDプレーヤーを(関連記事)発売する予定で,米Alpine Electronics社は,車載HD DVDプレーヤーを今回の2007 International CESで参考出展するという。

 一方,Blu-ray Discプレーヤーの出荷台数の伸びを牽引するのは,2007年もやはりPS3になりそうだ。PS3を下回る価格を設定できるプレーヤーが当分現れそうにないからである。ソニー・コンピュータエンタテインメントは,2007年3月までにPS3を全世界で600万台出荷するとしている。この結果として,Blu-ray Disc陣営は「2007年3月までに,Blu-ray Discタイトルの週当たりの出荷本数はHD DVDタイトルの3倍になる」(米Twentieth Century Fox社 Worldwide Home Entertainment, PresidentのMike Dunn氏)と予測した。

図1 2006年のDVD売上高トップ20に入ったタイトルのうち,18タイトルについてBlu-ray Disc版を用意したという
図1 2006年のDVD売上高トップ20に入ったタイトルのうち,18タイトルについてBlu-ray Disc版を用意したという
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図2 「いや,この(180万台という)数字はいくらなんでも保守的では,と周りから言われましたが・・・・」(東芝の藤井美英氏)
図2 「いや,この(180万台という)数字はいくらなんでも保守的では,と周りから言われましたが・・・・」(東芝の藤井美英氏)
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