韓国LG Electronics Inc.は,世界で初めてBlu-ray DiscとHD DVDの両規格に対応したプレーヤーを開発したことを明らかにした(ニュース・リリース)。2007年初頭に米国で発売する。製品の詳細は,2007年1月8日よりラスベガスで開催される「International Consumer Electronics Show(CES)」で公表する。

 LG社はBlu-ray Disc陣営の中核企業の一つだが,2006年2月に東芝と光ディスク関連技術のクロスライセンス契約を結んでおり,HD DVD関連の主要技術も利用できる(Tech-On!関連記事)。

Blu-ray/HD DVDプレーヤーの構成を予測する

 Blu-ray Disc/HD DVDプレーヤーと一言でいっても,その部品構成はいく通りか考えられる。Blu-ray DiscとHD DVD規格には共通部が多く,いくつかの主要部品を共用できるからだ。どこまで部品を共用できるかで,機器を構成する部品の総コストは大きく変わる。

 総コストを大きく左右すると思われるのが,光ヘッドの構成である。Blu-ray DiscとHD DVDの両規格に対応する光ヘッドには,2通りの構成が考えられる。一つは,Blu-ray Discに対応する光ヘッドとHD DVDに対応する光ヘッドを,両方とも載せる方式である。いずれの光ヘッドも実用化済みなので,技術的難度は低い。一方で,従来の次世代DVDプレーヤーと比べて光ヘッドが一つ増えるため,部品コストが少なくとも1万円程度アップするだろう。

 もう一つが,Blu-ray DiscとHD DVD再生機能を一つの光ヘッドで実現する構成である。光ヘッドを二つ用意するより部品点数を少なくできるので,コストを抑えやすい。

 だが,光ヘッドの統一は技術的に極めて難しい。Blu-ray Disc規格とHD DVD規格とでは,対物レンズの解像力の指標である開口数(NA)が大きく異なるためである。Blu-ray DiscとHD DVDは同じ波長のレーザを用いるため,DVDやCDで一般的なレーザの波長の違いを利用してNAを切り替える手段が使えない。

 NAを切り替える手段として,一部のレンズを光軸に沿って前後に駆動させる,対物レンズを二つ用意して切り替える,などの方法が考えられる。だが,いずれも技術的難度が高い。構造が複雑な分,コストアップ要因になりやすく,光ヘッドを統一するメリットが失われる可能性がある。

Blu-ray Disc/HD DVD光ヘッドの技術的可能性の詳細については,日経エレクトロニクス2004年9月27日号で詳報しています。

 Blu-ray Disc規格とHD DVD規格の違いは光ヘッドだけではない。音声符号化方式や著作権管理方式,変調方式,対話型操作機能など,いくつか異なる点がある。特にハードウエア・レベルでは,アナログ・フロントエンドLSIの仕様がそれぞれの規格で大きく異なる。

 ただしこれについては,解決策が既にある。既にNECエレクトロニクスが,Blu-ray DiscとHD DVDの両方式に対応したフロントエンド・チップセットを開発済みだからだ(Tech-On!関連記事)。Blu-ray Disc特有のコピー防止機能「BD-ROM Mark」にも対応する。2007年1月から量産出荷を開始する予定で,LG社が同チップセットを採用する可能性は十分にある。

 バックエンドLSIなど他の主要部品については,Blu-ray DiscとHD DVDで大きな違いがないため,大半の部品をほぼ共用できそうだ。ただし,対話型操作機能であるBlu-ray Discの「BD-Java」,HD DVDの「HDi」を実行できるミドルウエアをそれぞれ用意する必要があり,これがコストアップ要因になる可能性がある。