ほとんどの国内IDMにライセンス,ESD保護回路IPのSarnoff Europeに聞く
ESD保護回路のIPコア「TakeCharge」を開発・提供するベルギーSarnoff Europe社に話を聞いた。富士通が65nmのLSIで同コアの利用契約を2006年11月下旬に結ぶ(Tech-On!関連記事)など,多くの国内半導体メーカーが同社とライセンス契約を交わしている。
今回,話しを聞いたのは,Sarnoff EuropeのHenk De Blaaere氏(Director Business Development, Sales & Marketing)である。同氏によれば,2002年の同社設立以来,これまでに約200品種のチップに,TakeChargeは採用された。同氏が紹介したユーザー企業リストでは,日本のIDMが目に付く。具体的には,同氏は,東芝,ソニー,ルネサス テクノロジ,松下電器産業,富士通,リコー,沖電気工業,新日本無線,セイコーエプソン,独Infineon Technologies AG,伊仏STMicroelectronics社,米Altera Corp.,米PMC-Sierra, Inc.を同氏は挙げた。
日本のIDMが多い理由を問うと,「当社は設立から4年でまだ若い。すべての潜在顧客にアプローチできているわけではない。これまでは,IDMをターゲットに事業を進めてきた。日本は大手IDMが多く,われわれとしても力を入れてきた。ただし営業努力ではなく,日本のIDMにわれわれの技術を評価してもらった結果だと考えている。一方,米国のIDMが少ないのは自社でESD保護技術を持っている場合が多いことや社名を出す許可をもらえていないことがある」と,De Blaaere氏は答えている。
一方,ある国内半導体メーカーのエンジニアは,次のように言う。「かつて多くの国内IDMは,ESDのエンジニアを抱え,その技術開発も積極的に行ってきた。しかし,1990年代後半にEDAツールの開発を中止したように,チップの付加価値に直結しないESD技術についても新規開発を中止するようになった」。また,このエンジニアは「ASICやカスタムLSI事業では,顧客がSarnoffの回路を指定するような場合もある。そうした事態に備えて,社内向けのチップで一度は使ってみる必要はある」(同エンジニア)とも言う。
また別の国内半導体メーカーのエンジニアは,次のように語った。「最近,チップの入出力信号の速度が上がり,従来のESD回路がうまく動作しないケースが増えてきた。Sarnoff Europeが特許を持つESD回路ならば,高速入出力のチップに対しても問題ない場合が多い」。このメーカーでは通常のLSIには自前のESD保護技術を,高速入出力のチップではSarnoffの回路を使っているようだ。使い分けることで,ESD対策の総コストの削減を図る。後述するフル・サービスを受けると,TakeChargeの利用コストは「億」の単位に届くようである。
ツールやサービスも提供
De Blaaere氏によれば,TakeChargeの最大の特徴は,チップ面積が小さいことだという。「従来のESD回路よりも,TakeChargeは 80%小さい(つまり,従来の20%)」(同氏)とする。また同社は,ESD保護回路のIPコア(GDS-II)を単に販売するだけではなく,同コアの構成を決めるために使うツール(ソフトウェア)や設計ガイドライン,ドキュメント,通常動作にESD保護回路が与える影響をチェックするためのSPICEパラメータなども提供する。さらに,こうしたIPコアや各種ツールは,顧客の半導体プロセスに最適化して納品される。そして,これらを使いこなすためのトレーニングやコンサルティングといったサービスも提供する。
同社は,現在,HBM(human body model),MM(machine model),CDM(charge device model)と呼ばれる三つの電流モデルに対応するIPコアを提供している。「これらはいずれもデバイス単体のESD保護対策を前提にしている。今後はシステム・レベルのESD対策を提供していく。例えば,携帯電話機のむき出しの端子に静電気の発生しやすいもので触れた場合の対策を,システム・コストを加味して考えられるようにする」(De Blaaere氏)。このために,例えば,HBMモデルに比べて3倍の電流ピーク値,1/10の立ち上がり時間の大電流モデルを想定するという。
取材の最後に,ESD対策技術だけが,米国のSarnoff Corp.本社ではなく,ベルギー子会社のSarnoff Europeが担当しているのかをDe Blaaere氏に聞いてみた。同氏によれば,Sarnoffで同技術を開発したKoen Verhaege氏がベルギーの出身で,Verhaege氏が帰郷の申し出をSarnoffにした。同氏と同氏の技術を保持したいと考えたSarnoffが,そのために設立したのがSarnoff Europeだという。












