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 NTT物性科学基礎研究所は,フォトニック結晶を利用して光信号の進行速度を極端に遅くする素子を開発した。同社が論文を,2007年1月に創刊するSiフォトニクス関連の英国の雑誌「Nature Photonics」の2006年12月21日号に掲載したもの(日本語のアブストラクト)。「これまでで最も遅い光を実現した」(同社)という。

 素子に光信号を入力すると,媒体中の光信号の進行速度が遅いため,素子を通さなかった場合に比べて出力が最大1.45ns遅れる。光信号の媒体中での速度は真空での光速の5万分の1の5.8km/sである。これは,長距離ミサイルや遅いロケット並みの速度に相当する。従来は数百分の1の速度が一般的だった。

 今回のフォトニック結晶は,204nm厚と薄いSi基板に半径108nmの微細な穴を420nm間隔で規則正しく開けたもの。ただし,共鳴器として「線欠陥」と呼ぶ穴のない部分を3カ所設けている。この素子に共鳴する光は,波長が1.55547~1.55548μmのうち幅1.3pmの範囲である。共鳴の程度を示すQ値は最大1.2×106と非常に大きい。