IBM社のSiフォトニクスの応用イメージ。赤が光伝送,黄色が電気伝送の配線。遅延線(delay line)も描かれている。
IBM社のSiフォトニクスの応用イメージ。赤が光伝送,黄色が電気伝送の配線。遅延線(delay line)も描かれている。
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 米IBM Corp.は,Siチップ上に微細な遅延線(delay line)を形成する技術を開発した。同社が論文を,2007年1月に創刊のSiフォトニクス関連の英国の雑誌「Nature Photonics」の創刊号に当たる2006年12月21日号に掲載したもの(日本語のアブストラクト)。高速計算機のチップ間伝送を光信号で行う構想に向けた技術で,これを用いてチップ間の光伝送に必要な光信号のバッファが実現可能になったという。

 IBM社が開発した遅延線は,Siチップ上の光導波路で曲率半径が最小で6.5μmの微細なリングを形成し,さらにそのリングを最大100個,直列に連結した素子。導波路は,200mmのSOIウエハ上に,2μm厚のSiO2の層を作成し,さらにその上にSiのパターンを形成することで作成する。パターンは「2車線」を1組としており,その断面の寸法は,510×226nmである。

 こうした遅延線は,光の到着を遅らせることでバッファと同じ効果を実現する目的で用いられる。遅延線は従来からあるが,今回のものは寸法が非常に小さいのが特徴である。遅延線の伝播損失は,波長1.55μmの赤外線を通した場合に1.7±0.1dB/cmと低い。チップ面積が0.09μm2の素子の場合,500ps以上の遅延を示したという。

 情報のバッファリングの記録密度は従来に比べて高く,「0.03mm2の面積に10ビットで,従来のフロッピー・ディスクの1割の記録密度に相当する。この素子を数十万個,1チップ上に集積することも可能で,チップ間の光伝送実現への重要なステップになった」(同社)という。