「当面のテレビのターゲットは240フレーム/秒」。これは,ソニー テレビ事業本部 技術企画部 技術企画部 担当部長の中嶋康久氏が,アジレント・テクノロジーが2006年12月15日に開催した「HDMI ver.1.3aセミナー」で語ったものだ。

 中嶋氏の講演のテーマはデジタル家電全般だったが,テレビの進化の方向性に時間の多くを費やした。画質を決める要素として「空間分解能」「レベル分解能」「フレーム速度」を取り上げ,それぞれの現状と今後の進化のシナリオを示した。冒頭の発言は,3要素のうちフレーム速度に関するものである。

 テレビ開発者がフレーム速度を重視するのは,薄型テレビの動画応答性に関する課題を克服するためである。「液晶テレビのようなホールド型ディスプレイでは視覚的に動画のボヤケが生じる。CRTやPDPのようなパルス型ディスプレイではジャーキネスが発生する。これらは,フレーム速度を240フレーム/秒に上げることで解決する」(中嶋氏)。

 240フレーム/秒の実現時期については,2009~2010年を見込んでいる。現行の60フレーム/秒の次のステップは120フレーム/秒であり,これは2007~2008年を見込む。

 このほか,空間分解能については4K×2Kの実現時期は2010年以降,レベル分解能について12ビット階調になるのは2009~2010年を見込んでいる。色域については,最近導入が始まったxvYCCの搭載機種が今後増えていく見通しだ。

 これに伴い,データ量が増大するため,伝送路の帯域を広げる必要がある。HDMI ver.1.3が対応できるのは20Gビット/秒以下であり,120フレーム/秒のHDTV(2K×1K)の場合には16ビット階調まで対応できるが,240フレーム/秒では10ビットまで。4K×2Kでは,銅線では対応できず,光ファイバによる伝送手段が必要だとした。

 今回の講演では,同社のテレビ「BRAVIA」シリーズのHDMI搭載比率についても触れた。2005年に10%にすぎながったHDMI搭載率は2006年には100%になった。2007年には,最低2個のHDMI端子を搭載するという。HDMI ver.1.3aは上位機種に搭載するとし,その比率は30%程度になる見通しだ。

 最後に,各デジタル家電の追加機能についても言及した。テレビについては高階調化とフレーム速度の向上,ゲーム機についてはフレーム速度の向上が予定されている。HDMI ver.1.3aで導入された小型コネクタにより,ビデオ・カメラにもHDMI ver.1.3aの搭載が見込めるという。xvYCCにも対応し,撮影(カメラ)から記録(HDDやメモリ),伝送(HDMI),表示(テレビ)に至るまで広色域のコンテンツを取り扱えるようになるとした。コンテンツの配信手段としては,広帯域のIPネットワークに期待感を示して講演を締めくくった。