今回開発した処理の模式図(右)。左は従来
今回開発した処理の模式図(右)。左は従来
[画像のクリックで拡大表示]
開発したオゾン・アルカリ処理
開発したオゾン・アルカリ処理
[画像のクリックで拡大表示]

 三菱電機は,下水処理場で発生する下水汚泥からメタンとリンを同時に高効率で回収する処理技術を開発した。テスト・プラントにおける実証実験で,メタンの回収率は従来技術の約2倍,リンの回収率は汚泥に含有する量の90%以上であることを確認したとする。「今年度の研究開発の中では,1,2を争うようなインパクトのある技術だ。今後,幅広くこの技術を展開していきたい」(同社 先端技術総合研究所 環境システム技術部 部長の廣辻淳二氏)。2007年度以降,プラント・メーカーなどと共に下水処理場などへの導入を進める。

 今回の開発背景は大きく二つ。一つは,水の使用量の増加に伴って汚泥の排出量が増え,処理場の負荷が増大していること。国内における汚泥の排出量は年間約4億m3という。ただし,下水汚泥の乾燥重量の約80%は有機物であるため,エネルギーとしての有効活用が期待されていた。もう一つは,資源の枯渇が懸念されているリンが,下水汚泥中に大量に含まれていること。このため,リンの回収源として下水汚泥に注目が集まっていた。

 技術のポイントは,三菱電機が独自に開発した「オゾン・アルカリ処理技術」である。従来の処理法である嫌気性消化の前段階で,この処理を施すことで,(1)汚泥の溶解・改質が促進され,メタンガスの発生量が増大し,残存する汚泥の量が低減する,(2)汚泥からリンが溶出され,リンを回収できる,の大きく二つの効果が生まれると説明する。オゾン・アルカリ処理は,オゾン処理に引き続きアルカリ処理を施す方式。それぞれ単独の処理では見込めない,汚泥中の微生物の細胞壁崩壊などといった相乗効果が発揮されるという。

 メタンガスの発生量が増大し,残存汚泥の量が減少することで,廃棄する汚泥の処理費用も削減できる。三菱電機の試算によれば,オゾン・アルカリ処理を施さない場合に比べて,費用を約30%削減できる。これは,1日当たりの下水処理流量を10万m3で試算したものである。

 今回の技術開発は,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の開発テーマの一つとして三菱電機が委託を受けたもの。成果は,2006年12月14日~16日に東京ビッグサイトで開催される「エコプロダクツ2006」に出展する予定である。