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 帝人は,「帝人技術フォーラム」で耐熱性を高めたポリ乳酸(PLA)を開発したことを明らかにした。このPLAは,京都工芸繊維大学と共同で開発したもので,光学異性体であるL体とD体を結晶化させた点が最大の特徴。L体のみからなる一般的なPLAに対して融点が約50℃高い。帝人によれば,イメージとしては,L体とD体の形の違いがパズルのピースのようにうまくはまり合うことでL体単独の場合よりも結晶が密になり,融点が上がるという。

 課題となったのは,そうしたL体とD体の結晶をいかにコンスタントに造れるようにするかという点。従来はそれが難しかったが,帝人は,ある工夫をしてそれを可能としたとしている。ただし,詳細については明かせないという。

 帝人では,このPLAのことを「ステレオPLA」と呼ぶ。ステレオPLAは,耐熱性が高いことに加え,成形時間が従来より短くて済むという利点もある。一般的なPLAでは3~5分かかる成形が30秒くらいで可能としている。成形時間が短くて済むのは,結晶化のスピードが速いため。同社は「L体とD体の配列のパターンが決まっているため,結晶化が進みやすいのではないか」としている。

 耐熱性が向上したことによって,自動車部品へのPLAの適用が広がる可能性が出てきた。帝人によれば,自動車のフロアの下に配するアンダーパネル,ダッシュボードの裏側,ドアトリムなどへの適用が想定できるという。ドアトリムについては,耐衝撃性を向上させるために石油系の樹脂をブレンドしたもの(ただし,メインはステレオPLA)が候補となるが,アンダーパネルはステレオPLA単体でも通用するのではないかとしている。

 帝人は,2007年度中にステレオPLAの事業化が可能かどうかを見極め,早ければ2008年に事業をスタートさせる。