Wii本体と同じく,分解防止のためにY字形溝の特殊なビスが使われている
Wii本体と同じく,分解防止のためにY字形溝の特殊なビスが使われている
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ビスを外すとセンサーバー内部が明らかになる。ほとんど部品がない簡素な構造
ビスを外すとセンサーバー内部が明らかになる。ほとんど部品がない簡素な構造
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センサーバーの両端には赤外線LEDが5個ずつ組み込まれている。右下側から延び,基板にハンダ付けされているグレーのケーブルが,Wii本体から接続されているケーブル。赤線が入った白のフラットケーブルは反対側のLED基板へと延びている
センサーバーの両端には赤外線LEDが5個ずつ組み込まれている。右下側から延び,基板にハンダ付けされているグレーのケーブルが,Wii本体から接続されているケーブル。赤線が入った白のフラットケーブルは反対側のLED基板へと延びている
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片側辺り5個のLEDが直列接続されている
片側辺り5個のLEDが直列接続されている
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Wiiリモコン基板の先端部分に取り付けられたPixart Imaging社のCMOSイメージ・センサ
Wiiリモコン基板の先端部分に取り付けられたPixart Imaging社のCMOSイメージ・センサ
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 任天堂の新型ゲーム機「Wii」の目玉の一つは,動きを検知する機能を積極的に取り入れた新しいコントローラ「Wiiリモコン」である。Wiiリモコンの分解記事(Tech-On!関連記事)でお伝えした通り,Wiiリモコンには3軸加速度センサが内蔵され,リモコンを振ったり,傾けたりといった動きを検知してゲームの操作に使う。

 Wiiリモコンはまた,赤外線を使って,テレビ画面との位置関係を検知する機能を持っている。ゲームに使えるほか,Wiiリモコンで画面を指し示すことで,GUIを操作するポインタとしても使う。Wiiではこのために,テレビの画面の上または下に「センサーバー」と呼ばれる細長い機器を設置する。

 Wiiリモコンは先端部分にCMOSイメージ・センサと見られる部品が実装されているが,センサーバーとWiiリモコンが連動する仕組みは明らかではない。そこでセンサーバーを分解してみた。センサーバーもWii本体と同じくY字形の溝を持った特殊なビスでカバーが固定されている。このビスを取り外すと,あっけないほど簡素なセンサーバーの構造が明らかになった。

 その名に反し,センサーバー内部にセンサのたぐいはなかった。バーの両端部分,黒いアクリル樹脂のカバーの内側に,赤外線LEDが5個ずつ組み込まれているだけである。5個のLEDはそれぞれ直列に接続してあり,Wii本体からは約7.3Vの直流電圧が供給されている。詳しく調べたわけではないが,特に変調されている様子はなく,単純に常時点灯しているだけのようだ。

 このことからWiiリモコンの仕組みを推定してみよう。Wiiリモコンがテレビ画面の方向を向くと,センサーバーの両端の光点がイメージ・センサで捉えられる。二つの光点の位置関係と間隔からテレビ画面に対するWiiリモコンの向きや距離がある程度,見積もれる。この情報と3軸加速度センサから得たリモコンの姿勢(傾き)の情報を組み合わせれば,ユーザーが画面のどの辺りを指しているか決められる。

 Wiiリモコンの基板上にはこうした処理を担うマイクロプロセサは見当たらない。従ってイメージ・センサや加速度センサが得た情報はBluetoothを通じてWii本体に送られ,ポインタの位置決めに関するほとんどの処理を本体側で行う仕組みになっているはずだ。

 Wiiリモコンが内蔵したCMOSイメージ・センサを供給しているのは台湾Pixart Imaging Inc.である。このことは,同社が2006年5月12日に公表したことから明らかになっている(公表資料)。同社は,光学マウスや組み込み機器に使われる比較的解像度が低い製品を得意とするCMOSイメージ・センサの専業メーカーである。

 Pixart Imaging社の製品ラインアップから鑑みて,Wiiリモコンで採用しているCMOSイメージ・センサも解像度はさほど高くないだろう。ただし,Wiiリモコンにはきびきびとした操作感が求められるため,応答性は比較的高い品種が選ばれていると思われる。また,データを送るBluetoothの帯域が限られていることを考慮すると,画像に対する前処理を行ってデータ量を軽量化する回路がCMOSイメージ・センサに組み込まれている可能性がある。