ISSCC 2007では,MIMO(multiple input multiple output)技術を利用した無線LAN向けのLSIについて,米Atheros Communications,Inc.と米Broadcom Corp.の2社が発表する。2社ともに,現在製品化されているMIMO対応無線LANの2倍以上となる約300Mビット/秒という伝送速度を実現した。

 Atheros社は3×3 MIMOをベースバンド/MAC層LSIに実装した(講演番号 14.7)。仕様はIEEE802.11nの草案に基づいているという。設計ルールは0.18μmルールのCMOS技術で,チップ面積は,62.1mm2である。40MHzのチャネル幅で利用した場合に,MAC層での伝送速度300Mビット/秒を実現する。TCPでも150Mビット/秒以上の実効速度を見込めるという。有線の高速インタフェースであるPCI Expressにも対応し,そのA-D/D-A変換器などを混載する。電源電圧+1.8Vの場合の消費電力は送信時に1.379W,受信時に1.2Wである。通信距離は最大700フィート(約230m)であるという。

 一方,Broadcom社は,5GHz帯と2.4GHz帯の両方に対応し,かつ2×2 MIMO用に受信回路と送信回路を複数搭載した無線LAN向けのトランシーバLSIを開発した(講演番号 31.2)。IEEE802.11nの草案を提案した業界団体Enhanced Wireless Consortium(EWC)の仕様に基づく。物理層での速度は270Mビット/秒以上と,ISSCC 2006で米Intel Corp.が発表した108Mビット/秒を大幅に上回った。電源電圧が+1.8Vの場合の消費電流は,送信時が280mA,受信時が275mAである。