KDDIは,モバイルWiMAXの実証実験で「ハイブリッドARQ(hybrid automatic repeat request)」という誤り訂正機能の一種を利用すると,データ転送速度が下りで20%,上りで50%,全体で30%向上したと発表した。2006年11月20日に開催された日経エレクトロニクス主催のセミナー「ワイヤレス・シンポジウム2006」の場で明らかにしたもの。2006年12月中にも,総務省が2.5GHz帯での「広帯域移動無線アクセス」向け技術的条件を固める見通しの中,実験が順調であることをアピールした(関連記事)。

 ハイブリッドARQは,パケットの再送と誤り訂正技術を組み合わせて,受信信号のビット誤り率を効率よく低減する手法。比較的新しい技術だが,携帯電話のHSDPAにはすでに採用されている。KDDIは2006年2月での大阪での公開実験時には「端末にはハイブリッドARQの機能を既に実装済み。ただし,まだ実証実験には使っていない」(KDDI)としていた。

 セミナーで講演したKDDI 技術開発本部 技術戦略部 ワイヤレスブロードバンド開発室 室長の要海敏和氏は「ハイブリッドARQを利用すると,利用していない場合に比べて受信信号のCNIR(carrier-to-noise-plus-interference ratio)が4.6dB低減した。一方,周波数利用効率は,1.13~1.24ビット/秒/Hzに向上する。ハイブリッドARQは,実際のサービス時には必須だろう」とした。

 このほか,セミナーでは,ハンドオーバーの際に物理層の接続がわずかに途切れる場合でも,音楽をネットワーク経由で聴いているユーザーには音楽が途切れていないように聞こえる技術のデモンストレーションを公開した。アプリケーション・ソフトウエアでバッファリングと音声の再生速度を調整することで,接続の途切れをカバーするのだという。