図1 今回開発したシステムの構成
図1 今回開発したシステムの構成
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図2 デモンストレーションに利用したシステム。左側の2台のパソコンは視聴者の端末,右側は放送局内の機器
図2 デモンストレーションに利用したシステム。左側の2台のパソコンは視聴者の端末,右側は放送局内の機器
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図3 視聴者からのメールで紹介されたWWWページをパーソナリティが表示させ,送信すると…
図3 視聴者からのメールで紹介されたWWWページをパーソナリティが表示させ,送信すると…
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図4 視聴者の受信端末のWWWブラウザが,パーソナリティが閲覧しているページに切り替わる
図4 視聴者の受信端末のWWWブラウザが,パーソナリティが閲覧しているページに切り替わる
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図5 KDDI 執行役員 技術統轄本部長の安田豊氏(左),慶應義塾大学 環境情報学部 教授の村井純氏(中央),エフエム東京 執行役員 デジタルラジオ事業推進室 技術担当の仁平成彦氏(右)
図5 KDDI 執行役員 技術統轄本部長の安田豊氏(左),慶應義塾大学 環境情報学部 教授の村井純氏(中央),エフエム東京 執行役員 デジタルラジオ事業推進室 技術担当の仁平成彦氏(右)
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 慶應義塾大学,KDDI,エフエム東京は,デジタル放送波でIPデータを配信する技術「IP over デジタル放送」を利用した放送サービスの実現の可能性を共同で検討していくことで合意した(PDF形式の発表資料)。今後,慶應義塾大学はIP over デジタル放送の実現に必要な基礎技術の研究などを進め,KDDIやエフエム東京は新しいサービスやコンテンツの開発および検討などを行う。

 IP over デジタル放送では,WWWページなどのIPネットワーク上のデータを配信する際に,IPパケットをMPEG-2 TSパケットのペイロードとしてカプセル化する。MPEG-2 TSからIPパケットを取り出す機能を機器に実装すれば,受信したデータをWWWブラウザなどで表示できる。片方向ネットワークのルーティング方式である「UDLR(unidirectional link routing)」を用いることによって,上り回線として利用するインターネットと組み合わせた仮想的な双方向通信を実現した。

IPとの融合で「デジタル・ラジオのもう一つ先」を

 慶應義塾大学らは2006年11月20日に開催した記者発表会で,IP over デジタル放送の技術を採用したシステムを使って,「ネットサーフィン同期型ディスクジョッキー」と名付けたサービス形態を実演してみせた。デジタル・ラジオ放送の放送中に,ラジオ番組のパーソナリティが手許の端末で紹介したいWWWサイトなどを表示させ,それを視聴者に送信する。視聴者の受信端末は,パーソナリティが紹介したWWWサイトのデータを放送波から取り出し,WWWブラウザで表示する。このとき,ラジオ放送を聴いている視聴者が別のWWWサイトなどを紹介するインターネット・メールを放送局に送信し,その情報を確認したパーソナリティが放送波で視聴者に一斉送信する──といった形態である。このシステムはKDDIが開発し,コンテンツをエフエム東京が制作した。慶應義塾大学らは2006年11月22~23日に都内で開催する「SFC OPEN RESEARCH FORUM 2006」で,IP over デジタル放送を用いたシステムのデモンストレーション展示を行う。

 エフエム東京 執行役員 デジタルラジオ事業推進室 技術担当の仁平成彦氏は,IP over デジタル放送を「デジタル・ラジオのもう一つ先の話」とした。実用化の時期は未定だが,「著作権や制度などの問題は存在するが,IPというオープンな技術と融合することで,放送波を利用する新しいサービスを様々な人が開発しやすくなる」(仁平氏)とみる。

 今回のデモはデジタル・ラジオ放送を想定したものだが,IP over デジタル放送は「デジタル・ラジオ放送に限らず,デジタル・テレビ放送にも適用できる」(慶應義塾大学 環境情報学部 教授で慶応義塾常任理事の村井純氏)。実用化に向けた実験は,試験放送中の地上デジタル・ラジオ放送を使う予定。