携帯電話機や自動車など移動体に向けた高速の無線通信規格づくりを目指していた米IEEE802委員会の「IEEE802.20」作業部会は,2006年11月13日から米テキサス州ダラスで開催中の全体会合(Plenary Meeting)において,規格策定活動を再開した。同部会は,運営形態に透明性を欠くとの指摘が多く噴出したことを理由として,2006年6月から同10月まで活動を停止していた(Tech-On!の関連記事)。

 約半年ぶりの再開となった今回の会合では,上部機関であるIEEE-SA(IEEE Standards Association)の議長や,IEEE802 Executive Committee(IEEE802-EC)のメンバーが議事進行を見守る形で進められている。会議冒頭には,名前と所属,関心事項などを出席者一人一人が述べる時間が設けられた。例えばコンサルタントとして出席している参加者に対しては,どういう機関と契約して参加しているか,という点まで明らかにすることが求められるなど,より透明性を確保するための取り組みが図られている。

 今回のダラス会合では,まずこれまでに「意見を述べる機会を得られなかった」と主張する参加者に対して意見を言う場を与えるなど,議事運営の公平性を重要視している。このため,議事は非常にゆっくりと進んでいる。IEEE802.20に関しては,既に策定済みである基本伝送仕様のドラフト案の扱いや,作業部会の活動期間延長など,議論するべき事項が山積みである。しかし今回の会合でどこまで将来スケジュールを固められるかは不透明な状況だ。

 IEEE802.20が現在のところベースとしている仕様は,米QUALCOMM Inc.などの提案が基になっている(Tech-On!の関連記事)。QUALCOMM社が買収した米Flarion Technologies, Inc.のFlash-OFDM技術をベースとしたOFDMAによる伝送方式で,最大250kmの高速移動時の通信をサポートしている。会合にはQUALCOMM社のほか,米Intel Corp.,韓国Samsung Electronics Co.,Ltd.,京セラ,米Motorola Inc.などの関係者が多数出席している。