PS3に内蔵されていたBlu-ray Disc装置の全景
PS3に内蔵されていたBlu-ray Disc装置の全景
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スピンドル・モータと光ヘッド部分。Blu-ray Disc,DVD,CDの3世代に対応する光ヘッドながら,対物レンズは一つである。これまではBlu-ray Disc用と,CD/DVD兼用の2個の対物レンズを使う例がほとんどだった
スピンドル・モータと光ヘッド部分。Blu-ray Disc,DVD,CDの3世代に対応する光ヘッドながら,対物レンズは一つである。これまではBlu-ray Disc用と,CD/DVD兼用の2個の対物レンズを使う例がほとんどだった
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対物レンズを載せた可動部は,いわゆる4本ワイヤ式で支持している
対物レンズを載せた可動部は,いわゆる4本ワイヤ式で支持している
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光ヘッドの裏面(金属板のカバーをとったところ)。一番手前に3波長レーザがある
光ヘッドの裏面(金属板のカバーをとったところ)。一番手前に3波長レーザがある
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さらに小さな金属板のカバーなどを取り去る
さらに小さな金属板のカバーなどを取り去る
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光学系の全貌。一番奥が3波長半導体レーザ。出射した光はレンズや2個のビーム・スプリッタ(四角い透明なもの)を通過してから,可動式レンズを通過,さらに数枚のレンズを通って立ち上げミラー(手前の虹色にみえる透明な部品)に当たり,対物レンズ方向に出て行く。これが往路である。なお,可動式レンズは球面収差の補正などの役割を果たしているとみられる。復路では,まず光ディスクの記録面で反射した光が対物レンズを通って立ち上げミラーのところで曲げられる。そして一連のレンズを通り,ビーム・スプリッタに至る。ここでBlu-ray Disc用の青紫光は対応するビーム・スプリッタで90度曲げられ,レンズを通ってBlu-ray Disc用の光検出器に入る。CD/DVD用の近赤外/赤色光は,別のビーム・スプリッタで90度曲げられて,CD/DVD用の光検出器に至る(光学系の構成は一部日経エレクトロニクス編集部が推定した)
光学系の全貌。一番奥が3波長半導体レーザ。出射した光はレンズや2個のビーム・スプリッタ(四角い透明なもの)を通過してから,可動式レンズを通過,さらに数枚のレンズを通って立ち上げミラー(手前の虹色にみえる透明な部品)に当たり,対物レンズ方向に出て行く。これが往路である。なお,可動式レンズは球面収差の補正などの役割を果たしているとみられる。復路では,まず光ディスクの記録面で反射した光が対物レンズを通って立ち上げミラーのところで曲げられる。そして一連のレンズを通り,ビーム・スプリッタに至る。ここでBlu-ray Disc用の青紫光は対応するビーム・スプリッタで90度曲げられ,レンズを通ってBlu-ray Disc用の光検出器に入る。CD/DVD用の近赤外/赤色光は,別のビーム・スプリッタで90度曲げられて,CD/DVD用の光検出器に至る(光学系の構成は一部日経エレクトロニクス編集部が推定した)
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別の角度から見たところ
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 「プレイステーション 3」(PS3)の分解は基本的に一段落したのだが,なにしろ発売当日にバタバタとしながら分解・記事掲載を行ったので,細かい部分まで手が回らないところもあった。今後は,機会を見つけてさらに詳しい部分までお伝えできればと考えている。

 まずは,PS3の中核モジュールの一つともいえるBlu-ray Disc装置から採り上げたい。

対物レンズもレーザも1個

 今回のBlu-ray Disc装置では,対物レンズが1個にまとめてある。半導体レーザにも「3波長レーザ」と呼ばれる,1つのパッケージでCD用の近赤外,DVD用の赤色,Blu-ray Disc用の青紫色のレーザ光を出せるものを用いた。

 従来は,Blu-ray Disc用に対物レンズとレーザ素子を1組,同様にCD/DVD兼用のものを1組それぞれ用意し,光学系を別にする例が民生機器では多かった。部品点数は多くなってしまうものの,CD/DVD系は既存の安価な部品を流用でき,さらに個々の部品技術が新しくてまだ安定しているとはいえないBlu-ray Disc側の部品も可能な限りシンプルなものにできるからだ。

 もちろん,部品技術や生産技術が向上すれば,光学系を1つにまとめたほうが有利になることは間違いない。小型化できるばかりでなく,量産性やコストの点でも有利になっていく(Tech-On!の関連記事「次世代PSのBD-ROM採用で久多良木氏が語る」)。しかし,実際に開発・量産に踏み切れるメーカーは少ない。製品化に至るまでに乗り越えねばならない技術的な障壁が高く,開発負担が重いからだ。重みを跳ね返して利益を出すには,相当な数量の光ヘッドを長い期間にわたって継続的に出荷できる状況がはっきりと見えていないと苦しい。

 実は,記録媒体にDVDを採用した「プレイステーション 2」のとき,ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)は同じことをやった。それまでCD用とDVD用の光学系を別に用意することがほとんどだったが,「2波長レーザ」を開発・採用し,光学系を一つにまとめ上げて見せた。

 同社は今回も光学系を1つにまとめ上げた。しかし,それには前回とは比べものにならないほど,高い技術が要求されたに違いない。それでも統合に踏み切った理由には,将来のコストダウンのほか,PS3の筐体内に装置を入れるために光ヘッドを小型化・薄型化したかったことなどもあったと見られる。Blu-ray Disc方式と対立しているHD DVD方式では,信号層とディスク表面の距離が0.6mmでDVDと同じことから,光学系を1つにまとめやすい。これへの対抗策という意味もあろう。

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