図1 BL-PA100KTを使ったHDTV映像信号の伝送
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図2 信号レベルの比較。左側は従来方法,右側は今回のWavelet OFDM
図2 信号レベルの比較。左側は従来方法,右側は今回のWavelet OFDM
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図3 電力線通信モジュールの外形寸法を比較。上が従来,下が今回
図3 電力線通信モジュールの外形寸法を比較。上が従来,下が今回
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図4 今回のモジュール
図4 今回のモジュール
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 松下電器産業は,電源コンセントから電力線を使ってネットワーク接続できる電力線通信アダプタ「BL-PA100KT」を発表した(図1)(発表資料1)。「HD-PLC」と呼ぶ方式を採用しており,データ伝送速度は最大190Mビット/秒という。「使用条件にもよるが,実効的にも70~80Mビット/秒は出せる」(同社の説明員)とする。HD-PLCは変調方式に「Wavelet OFDM」という独自技術を使っており,周波数ごとに細かく信号をカットできる。これにより,アマチュア無線や短波放送といった,電力線通信が干渉してしまうと懸念されていた周波数領域において信号レベルを抑制でき,アマチュア無線や短波放送への影響を抑制したとする(図2)。

 BL-PA100KTは,親機である「マスターアダプター」と子機の「ターミナルアダプター」の2機で構成する。増設用のターミナルアダプター「BL-PA100」も用意しており,1台のマスターアダプターに対してターミナルアダプターを最大15台まで登録できる。これらアダプタ間の通信には128ビットAESに対応する暗号技術を採用した。アダプタで使う暗号は,マスターアダプター1台ごとに工場出荷前に設定する。いずれの製品も,2006年12月9日に発売する。価格はいずれもオープン。店頭予想価格は,BL-PA100KTが2万円前後,BL-PA100が1万3000円前後とみる。

組み込み用には,部品内蔵基板を採用


 今回の電力線通信アダプタの発売と同時に,パナソニック コミュニケーションズとパナソニックCC宮崎は,組み込み用に開発した電力線通信モジュールを発売した(発表資料2)。ルータといったネットワーク機器やAV機器など,さまざまな機器への搭載を想定する。電力線通信アダプタと同じく,HD-PLC方式を採用した。機器への組み込みを容易にするため,松下電器産業の部品内蔵技術「SIMPACT」という実装技術を用いている。基板面積を従来に比べて約40%削減した(図3,図4)。外形寸法は約45mm×約33mm×約8.5mm。2006年12月1日にサンプル出荷を始める予定。価格は個別対応。

 従来の電力線通信モジュールでは,6層の多層プリント配線基板を使ってきた。今回は,従来ならばプリント配線基板の表面や裏面に実装していたチップ抵抗やチップ・コンデンサ,EMI対策用の積層ビーズを,プリント配線基板内に埋め込んだ。SIMPACTを使えば「最大1005サイズまでの受動部品を内蔵できる」(説明員)。将来的にはLSIも内蔵し,さらにモジュール面積を削減することも視野に入れる。ただし,電力線通信用のLSIは発熱量がまだ大きいため,プリント配線基板に内蔵するとなるとチップを放熱させる新たな工夫が必要になるという。