2006年11月13日,アイサプライ・ジャパンと日経マーケット・アクセスは「第1回バリューチェーン世界戦略セミナー」を共同で開催した。基調講演では米iSuppli社のMarket Intelligence Services部門のVice PresidentであるDale Ford氏が,世界の携帯電話機市場の全体像について語った。

 2005年末の世界における携帯電話の加入者数は,約21億3000万人。2006年末には26億人,2011年には約40億人を突破すると予測する。しかし,今後は過去10年のような成長は望めず,成長率は鈍化していくという。地域別に加入者数を見ると,成長が著しいのはインドと中国である。

 2005年の全世界の市場規模は約5360億米ドルで,内訳は例えば半導体が約387億米ドル,ディスプレイが約139億米ドル,ソフトウエアが約356億米ドル,コンテンツが約74億米ドル。1人が1カ月に携帯電話にかける金額は約21米ドルである。

 携帯電話機の2005年の生産台数は,前年比15%増の約8億2000万台。2006年末には9億6600万台になる見込み。2011年には12億台を超えると見ているが,生産台数も加入者数と同様に成長率は鈍化していくという。また,携帯電話機の世代交代は,7年ごとに起こるという現象が見られる。第1世代と第2世代の携帯電話機の生産台数の割合が入れ替わったのは1995年,第2世代と2.5世代(2.7世代を含む)が入れ替わったのは2002年だという。

 携帯電話機市場は,新しい技術開発やサービスの展開が求められるため,コスト効率を高める必要がある。スケールメリットも必要になるため,業界内の整理統合は今後も進むという。業界内のシェアは,Nokia社,Motorola社,Sumsung社,LG Electronics社,SonyEricsson社といったトップ5の企業により集中するだろうと話した。

 技術動向としては,今後はデータの転送速度だけでなく,音楽再生やテレビ放送受信,ビデオ・ストリーミングなど新たな価値の提供が求められる。また,モバイル・バンキングや「位置情報サービス(LBS:location based services)」といったサービスが注目される。

 携帯電話機には高度な機能が求められる一方,現実に使われているのは音声通信が多いという面がある。現在の携帯電話機市場は,高機能機種と低機能機種に2極化している。この二つはコストの構成比が全く異なり,企業にとっては違うコスト管理を行うことになる。接続方式や搭載機能など,携帯電話機の構成はユーザーに応じてさまざまな組み合わせがある。これらの機種に対して,コストを考慮しながらどのように価格設定するかが課題であるという。