無線周波数の2.5GHz帯でモバイル・ブロードバンドの実現技術として,複数の仕様が認められる公算が強まった。総務省が2006年11月9日に開催した「情報通信審議会 広帯域移動無線アクセスシステム委員会 技術的条件作業班」が,無線基地局の電波出力条件などを詳細に規定する報告書案を作成したもの。具体的には,(1)IEEE802.16e-2005(モバイルWiMAX),(2)従来のIEEE802.20で米QUALCOM Inc.が提案した「MBTDD-Wideband」,(3)同じくIEEE802.20で京セラが提案した「MBTDD 625k-MC」,(4)ウィルコムが提案している「次世代PHS」の4方式について,技術的な利用条件の案を取り決めた。

 同報告書案は引き続き,2006年11月14日(火)の広帯域移動無線アクセスシステム委員会で議論される。同委員会でこの報告書が承認されれば,パブリック・コメントなどの手続きを経て,2006年12月中には情報通信審議会が答申を出す見通しである。

NTTドコモとのガードバンドは制限付きの10MHzに

 今回議論した2.5GHz帯は具体的には,2535~2630MHzの95MHz分。同委員会が発足した当時は,2535~2605MHzの70MHz分だった。2605~2630MHzの25MHz分で予定されていた「準天頂衛星システム」の導入計画の具体化が進んでいないことから,この25MHz分も検討対象としたという。

 同報告書案では,技術作業班で長く議論が続いていたほかの無線システムとの共存条件についてようやくガードバンドの値が規定された。具体的には,2505~2535MHzを利用するNTTドコモの衛星電話サービスとの間に10MHz幅のガードバンドを設定。さらに,隣接する10MHzに電波出力や運用場所などの制限を設けることで,NTTドコモが主張していた「20MHz」案との妥協を図った格好である。

 2630~2655MHzを利用するモバイル放送との間には,5MHz幅のガードバンド幅を設ける方針。このガードバンド幅であれば「WiMAXがモバイル放送端末に与える干渉の発生確率は3%以下」(同報告書案)になるという。

事業者の選定が無線方式の選定に

 広帯域移動無線アクセスシステム委員会は,今回,技術的条件を定めた4方式に関して,これ以上の絞り込みはしない方針である。実際にどの方式を使うかどうかは,2007年前半にも選定する通信事業者の選択に任される。「複数の無線方式が2.5GHz帯に混在することも十分あり得る」(同委員会 専門委員で電波産業会 専門理事 事務局長の若尾正義氏)という。