3年後の日本は,今の「日本市場向け生産拠点」「マザー工場としての生産拠点」より「高難易度/高付加価値製品向け生産拠点」としての役割が大きくなる----。こんな傾向が,日本能率協会と日本能率協会コンサルティングが2006年6月に実施した「第2回モノづくり実態調査」から明らかになった。

 同調査では,業界別の企業数比率に従って従業員100人以上の企業を無作為に抽出し,生産関連の責任者に対しモノづくりに関する質問を郵送した。郵送件数は6000件で,返送件数は474件。そのうちの80%を,「電気機器製造」(22%),「自動車/自動車部品」(13%),「食品製造」(12%),「機械製造」(12%),「その他製造業」(12%),「非鉄金属および金属製品」(9%)の6業界が占める。

 同調査で日本に生産拠点を置く目的を尋ねたところ,現在は「消費地(日本市場向け)生産拠点(納期/サービスの追及)」が36%,「マザー工場としての生産拠点」が31%,コストの追求のための生産拠点が17%と上位を占める。ところが3年後には,それぞれ10%,24%,1%と下がり,代わって「高難易度/高付加価値製品の生産拠点」が現在の6%から51%に急上昇する。つまり3年後の日本では,納期やサービスを優先した生産から高い技術力を生かすなど日本ならではの生産に軸足を移している様子がうかがえる。

 このことは,「モノづくり改革」の重点項目に関する調査にも現れている。現在は「コスト向上」が78%,「品質力の向上」が75%と飛び抜け,この二つに大きく水を開けられる格好で「新製品開発能力の向上」が48%と続く。ところが3年後には「コスト向上」は62%に,「品質力の向上」は59%に低下する一方で,「新製品開発能力の向上」が60%まで向上する。この傾向は特に「電気機器製造」で顕著というが,日本で新製品開発を促進することで「高難易度/高付加価値製品の生産拠点」としての役割を果たしていく考えのようだ。

 逆に,中国をはじめとするアジア圏を生産拠点とする目的は,現在と3年後でそう大きく変わらない。ただ,「コストの追求のための生産拠点」としての役割が44%から37%と7ポイント下がる一方で,「消費地(アジア圏市場向け)生産拠点(納期/サービスの追及)」は24%から25%とほぼ横ばい,「消費地(アジア圏市場向け)生産拠点(地域別商品開発と一体化した地域別生産」は10%から17%へと7ポイント高まる。つまり,アジア圏では今後,コストを単に追求するだけではなく,開発と生産を一体化して消費地(アジア圏市場)向けの製品を積極的に開発,販売していく構えだ。詳しくは『日経ものづくり』2006年12月号に掲載予定。